1: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:46:21 ID:WTy

 ――とある夏の日、7月16日。


彡(゚)(゚)「はーあ、ワイだって好きで脛かじりやってるわけやないねん」

彡(゚)(゚)「マッマも厳しいなあ……」

彡(゚)(゚)(7月16日……。就職に失敗したワイは今日もこうしてさまよっている)

彡(゚)(゚)(大学を卒業して以来は就職浪人・就職難民となったワイに、実家から召集令状が届いた)

彡(゚)(゚)(帰ってこい――異様な圧力を纏ったマッマからのメールに怯え、泣く泣く帰省した)

彡(゚)(゚)(そうして世間が夏休みへ向かおうとしているこの頃、ワイは実家で連日のごとく両親からのありがたいお言葉の数々をいただいていた……)

彡(゚)(゚)(そして今日――いつものようにマッマからお叱りを受けたワイは、家にいるのも忍びなく外に出た)

彡(゚)(゚)(ぼうっとして歩いていると、気付けば近所の神社、そこへ続く石段の前にいた)

引用元: ・彡(゚)(゚)「君の打ち上げ花火下から見る少女の名は時をかけるサマーウォーズ」

3: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:49:35 ID:WTy

彡(゚)(゚)「こうなったら、神頼み作戦や――」

彡(゚)(゚)(情けないが、こうなってしまったら後は神頼みしか策もない――そんな自暴自棄に陥って、ワイは境内へ続く長い石段を上っていく)

彡(゚)(゚)「……?」

彡(゚)(゚)(半分ほど上ったところであったか。真ん中を通る金属製の手すりによって上り方面と下り方面に分けられた石段――その下り方面、向かい側から誰かが下りて来る)

彡(゚)(゚)(夕時、境内へ近付くにつれヒグラシの声が徐々に大きくなる……。寂しげで儚い時間帯と妙に合っているような、そんな様相の女)

彡(゚)(゚)(長い黒髪は煽情的で、どこかの制服――あれは確かワイの出身校であったか、それの夏服を身に纏った涼しげな少女が石段を下りてくるではないか)

彡(゚)(゚)(素直に、射精です――いや、こんな時間帯に少女が一人参拝とは、一体何事であろうか)

彡(゚)(゚)(そんな想像をしていると、気付けばその少女は目の前にいて、すれ違おうとしていた……)

4: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:52:11 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「……ッ」

彡(゚)(゚)(これは、よからぬことを想像したワイへの戒めか)

彡(゚)(゚)(それとも、自堕落な生活を送るワイへの鉄槌か――)

彡(゚)(゚)「ど、どうして……!?」

彡(゚)(゚)(滴り落ちる鮮血が、石段を赤く染めていく)

彡(゚)(゚)(――ワイは、すれ違いざまに少女から刺された)

彡(゚)(゚)(どうやら、刺されたらしい。右の腹、深々とナイフが刺さっている)

彡(゚)(゚)(何故か冷静に分析できている自分に驚くが、これは死ぬ間際に見るという、いわゆる走馬灯のような現象と似たものであろう)

彡(゚)(゚)(つまり――ワイはここで死ぬのだ)


5: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:53:59 ID:WTy

彡(゚)(゚)(痛みは感じない……。だか、猛烈な悪寒が押し寄せる)

彡(゚)(゚)「な、何で……」

彡(゚)(゚)(そうしてワイは石段の上に倒れた)

彡(゚)(゚)(このまま何も、何も成功しないままのたれ死にするなんて)

彡(゚)(゚)(遠くなる少女の背中……)


 ……全てを、清算しなさい。


彡(゚)(゚)(そんな声が聞こえたと同時に、ワイの意識は遠のいた――)


6: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:55:50 ID:WTy

彡(゚)(゚)(どれくらいの時間が流れただろうか)

彡(゚)(゚)(そんな意識が暗闇の中に芽生える)

彡(゚)(゚)(それと同時に、『ワイは死んだはず』という意識もやって来る)

彡(゚)(゚)(目を開ける――開けることができた)

彡(゚)(゚)(これが死後の世界だろうか……。一面青一色の世界。乱反射という現象であったか、揺らめく光がその世界を照らしている)

彡(゚)(゚)(音が遠い……。何かモゴモゴとした音が聞こえるが、それはぼうっとしていてハッキリしない)

彡(゚)(゚)「……?」

彡(゚)(゚)(……浮遊感を覚える)

彡(゚)(゚)(まるで、水中にいるかのような――)

彡(゚)(゚)(そうか……。ここは、水中……?)

彡(゚)(゚)(でも、どうして……)

9: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:57:35 ID:WTy

彡(゚)(゚)(――その時であった)

彡(゚)(゚)(水面が揺らぐ……。上から何かが降って来る)

彡(゚)(゚)(降って来た衝撃によって発生した波紋や大量の泡。それと共に現れたのは――)

???「大丈夫か、やきう……!!」ザパァッ

彡(゚)(゚)(ワイは何者かに水面へ担ぎ上げられた……。ワイは溺れていたのだろうか)

???「おい、大丈夫か!?」

彡(゚)(゚)(ワイに声をかける男……。確かこいつは……)

彡(゚)(゚)「もしかして……翔平か?」ゴホッ、ゴホッ

翔平「お前、溺れたショックで友人の名前まで忘れたのか?」

彡(゚)(゚)「こ、ここは……?」

翔平「どうやら本当にやられたらしいな……」

翔平「今はプールの授業中だ。それでお前は溺れていた――これで理解できたか?」

彡(゚)(゚)「あ、ああ……。すまんな……」

翔平「一回上がったらどうだ? 本当に大丈夫か?」

彡(゚)(゚)「ああ……。大丈夫や、サンガツ……」

彡(゚)(゚)(一体、どういうことであろうか)

11: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)00:59:57 ID:WTy

彡(゚)(゚)(謎の少女に刺されて死んだはずのワイは、次に目を開けるとプールの中で溺れていたのだ)

彡(゚)(゚)(これは……。夢……?)

彡(゚)(゚)(プールサイドに上がると、信じ難い光景が広がっていた)

彡(゚)(゚)(懐かしい、翔平という友人……。中学時代の友人である)

彡(゚)(゚)(中学時代そのままの彼が、ワイの目の前に現れたのだ)

彡(゚)(゚)(それだけではない……。プールにいる人間、その全員をワイは知っているし、この景色でさえも知っている……。いや、覚えている)

彡(゚)(゚)(これは、ワイが通っていた中学校のプールや……!!)

彡(゚)(゚)(……ということは!!)

???「おいやきう、どこへ行くんだ!? 大丈夫か!?」

彡(゚)(゚)「あ、新井先生……?」

彡(゚)(゚)「と、トイレに行ってきます!!」

新井「お、おう……。前みたいに漏らすなよ?」

12: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:01:33 ID:R2C
SSだったのか…

13: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:02:09 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……!!」

彡(゚)(゚)(トイレに行き、鏡に映った自分の姿を確認する)

彡(゚)(゚)「な、なん……やと……!?」

彡(゚)(゚)(これは夢である――そうとしか思えない状況)

彡(゚)(゚)(鏡に映ったワイの姿は、中学生のワイであった)

彡(゚)(゚)「そんな、馬鹿な……」

彡(゚)(゚)(きっと夢だ――そう思って、ありがちであるが頬をつねる)

彡(゚)(゚)「痛っ!? なにすんねん!!」ドグシャア

彡(゚)(゚)(自分を殴る――痛い)

彡(゚)(゚)「夢じゃ……ない!?」

15: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:03:58 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(どういう原理であるか、どうやらワイは中学時代にタイムスリップ――いや、タイムリープしたらしい)

彡(゚)(゚)(およそ漫画や映画でしか目にしたことのない状況)

彡(゚)(゚)(そんな状況にワイは陥っている)

彡(゚)(゚)(夢であって欲しい……。しかし、痛みが知らせたのは残酷な現実である)

彡(゚)(゚)(どう、して……?)

彡(゚)(゚)(疑問が押し寄せ、それに支配される)

彡(゚)(゚)(――この世界は残酷だ)

彡(゚)(゚)(これは、膨大な時間を無駄にしてきた自堕落なワイへの制裁なのだろうか)

彡(゚)(゚)(未だ微かに感じる頬の痛みが、ワイに何かを告げていた……)

17: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:05:54 ID:WTy

養護教諭「目立った外傷はないようだけど、どうする? 病院に連絡して予約を取ってもらう? 心配なら検査してもらった方がいいわよ?」

翔平「そうだよ(便乗)」

彡(゚)(゚)「いや、大丈夫です……。痛みも何もありませんし、今は意識も明瞭です」

養護教諭「そう……。でも、何か些細なことでもおかしいと思ったらすぐに伝えるのよ?」

彡(゚)(゚)「はい、そうします……」

養護教諭「あと、ご両親にもちゃんと伝えるのよ?」

彡(゚)(゚)「あ……、はい……」

19: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:07:15 ID:WTy

 【放課後、駐輪場】


彡(゚)(゚)「何が起こったんや……」

彡(゚)(゚)(未だに状況が呑み込めない……。しかし、そんなワイを置いて世界は回る)

彡(゚)(゚)(殺されたと思ったら、中学時代で目覚めたワイ……)

彡(゚)(゚)(西暦を確認しても、ワイの中学時代と合致する)

彡(゚)(゚)(中学3年生の7月……。どうやらワイはその時代にタイムリープしたようだ)

彡(゚)(゚)「タイムリープか……」

彡(゚)(゚)(タイムリープ――時間跳躍、時間移動。タイムスリップと似ている言葉であるが、過去でも未来でも時代を問わない印象のタイムスリップに対し、タイムリープは自分が生きていた時代、過去の自分に戻るといった印象が強い)

彡(゚)(゚)(そしてワイも、中学3年生のワイに戻っている――そう、これはタイムリープだ)

20: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:09:32 ID:WTy

彡(゚)(゚)(ただ、完全なる中学3年のワイではない)


彡(゚)(゚)(それは、今のワイはこの時代から見た未来の記憶も持っているからだ)


彡(゚)(゚)(例えば――友人の翔平は花崎東という高校に進学し、超高校級のピッチャーとなり、ドラフトにかけられ、プロ野球選手になり、そして最終的には海を渡ってメジャーリーガーとなる)


彡(゚)(゚)(そういった未来の記憶も持ち合わせているので、タイムリープといっていいか分からないが、ややこしいのでタイムリープと表現することにする)


彡(゚)(゚)(――そして、こういった現象が起こる理由を考える)


彡(゚)(゚)(漫画や映画の知識しか持っていないが、たいていは何かの困難・問題があって、それを解決しないともとの時代に戻れない――といった流れである)


彡(゚)(゚)(もし、ワイの現象もそのような流れであるなら、その解決すべき問題とは何か)


彡(゚)(゚)(中学時代に、そんな問題はあったのか)


彡(゚)(゚)(……分からない)

22: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:11:27 ID:WTy

彡(゚)(゚)(それに、仮に問題をクリアしたとして、その後はどうなる?)

彡(゚)(゚)(ワイは殺されたはず……。ということは、殺される前の時間軸に戻るのであろうか)

彡(゚)(゚)(それまでの記憶はどうなる……?)

彡(゚)(゚)(……とにかく問題は山積みであるが、現時点で言えることは『もとの時代に戻る』ということである)

彡(゚)(゚)(もとの時代――ワイが殺されたあの時間に)

彡(゚)(゚)(戻った後のことは、その時考えればいい。とにかくもとの時代に戻らないと……)



???「やきう君、どうしたの……?」

23: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:13:05 ID:WTy

彡(゚)(゚)(放課後、駐輪場で一人考え込んでいた)

彡(゚)(゚)(どうやら長い時間そうして立ち尽くしていたようで、通行人に怪しまれたらしい。声をかけられる)

彡(゚)(゚)「ええと……。委員長……?」

???「委員長ね……。やっぱり、普段のやきう君じゃないわね。大丈夫?」

彡(゚)(゚)「……?」

???「普段のやきう君なら、私を委員長と呼ばない。『まゆみちゃん』でしょ?」

彡(゚)(゚)「あ、ああ……! まゆみちゃん……!」

彡(゚)(゚)(ワイに声をかけたのは学級委員長のまゆみであった)

彡(゚)(゚)(容姿端麗、成績優秀、品行方正――委員長という存在を絵に描いたような存在……)

彡(゚)(゚)(後頭部で束ねた黒髪をわずかに揺らし、涼しい顔で微笑む美少女。夏の日差しがあっても、玉のような肌は白く麗しい)

彡(゚)(゚)(校内でも性別問わず、更には教師陣からも人気があった模範的生徒だ)

彡(゚)(゚)(確か、数々の告白を受けていた記憶もある……)


まゆみ「……プールで溺れかけたって聞いたけど、大丈夫なの?」

24: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:15:12 ID:qUl
ヒロインランキング
翔平>まゆみ>ナイフ女>養護教諭

25: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:15:30 ID:WTy

彡(゚)(゚)「あ……。いや、へーきへーき!」

彡(゚)(゚)「まゆみちゃんを委員長と呼んでしまうくらいはダメージがあるけど」

まゆみ「ふふっ……。それ、冗談に聞こえないけど」

彡(゚)(゚)「心配してくれてサンガツ。ワイは大丈夫や」

まゆみ「それならいいんだけど、気をつけてね?」

彡(゚)(゚)「うっす」

まゆみ「――そういえば、もうすぐ夏祭りね」

彡(゚)(゚)「夏祭り……。ああ、七夕祭りのことか?」

まゆみ「ええ……。時間が経つのは早いわね」

まゆみ「……やきう君は、誰かと行くの?」

彡(゚)(゚)「そうやな。翔平は部活があるやろし、あいつらが終わってから一緒に行くかも」

まゆみ「そうなんだ……」


???「おーいまゆみー。何してんのー?」

26: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:17:22 ID:WTy

彡(゚)(゚)(久方ぶり、美少女との会話に胸を躍らせていると、思わぬ妨害が入る)

彡(゚)(゚)(あれは確か――まゆみの友人だった筒香と藤浪か)

筒香「まゆみー、帰るよー?」

藤浪「あれ、もしかして青春中だった?」

まゆみ「いやいや……! そ、それじゃあまたね、やきう君!」

彡(゚)(゚)「邪魔が入ったな、クソが(おう、またな!)」

彡(゚)(゚)(ワイが社会のレールから逸脱して、それから感じることのなかった青春の煌き)

彡(゚)(゚)(たとえ夢であっても、あの日々をやり直せるなら――そんな感情が生まれ、ワイは遠くなる美少女の背中をずっと眺めていた)

27: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:18:29 ID:qUl

28: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:19:43 ID:WTy

彡(゚)(゚)(どうやら、本当に中学3年の夏に戻ったらしい――)

J( ‘-`)し 「あんた、期末試験はどうなの?」

彡(゚)(゚)(マッマでさえも若返っている)

彡(゚)(゚)(若返る――いや、あの頃のマッマだ)

J( ‘-`)し 「ちょっとあんた、聞いてんの?」

彡(゚)(゚)「期末試験ねぇ……。そんな時期やったな」

J( ‘-`)し 「そんな時期やったなぁ――じゃないでしょ!」

J( ‘-`)し 「あんた、受験生って自覚あんの!? どこの高校行きたいのか知らんけどね、怠け者に食わせる飯はないわよ!?」

彡(゚)(゚)「ハイハイワロスワロス、適当に行けそうなとこ選ぶから安心してええで」

J( ‘-`)し 「――逝ってよし」グシャアッ!

29: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:21:38 ID:WTy

妹「にぃに、にぃにー、からあげちょーだーい!」

彡(゚)(゚)「イモウット……」

彡(゚)(゚)(そうだ、この頃のイモウットはかわいかったなぁ……)

彡(゚)(゚)(少なくとも、『聞いてんのか!? おい、引きこもり!!』なんて言わないし……)

彡(゚)(゚)(お前、そう遠くない未来、ギャルになって実のアッニを引きこもり呼ばわりするんやぞ)

彡(゚)(゚)(はあ……)

彡(゚)(゚)「おう、からあげでも何でもやるわ。いっぱい食べて大きくなるんやぞ(意味深)」

J( ‘-`)し 「あんた、大丈夫……? 明日は地球が滅亡するんじゃないの?」

彡(゚)(゚)「大きなお世話じゃ」

妹「わーいっ! にぃにだいしゅきぃー!」

彡(゚)(゚)「……」

30: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:22:39 ID:qUl
これはランキングに支障を来す…

32: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:24:06 ID:WTy

彡(゚)(゚)(そう、何もかもがあの時代、あの夏に戻っている……)

彡(゚)(゚)(PCならウィンドウズXPやVista……)

彡(゚)(゚)(家庭用ゲームならPS2、ゲームキューブで、間もなくPS3とWiiが発売されるような時期……)

彡(゚)(゚)(携帯電話はいわゆるガラケーが主流。テレビはブラウン管、アナログ放送)

彡(゚)(゚)(テレビをつけると歌番組――未来、もとの時代でも続いている長寿番組であるが、出演しているアーティストがあの頃に流行っていたそれだ)

彡(゚)(゚)(〇塚愛、〇田來未、〇崎あゆみ……。ワイが中学時代に勢いのあったアーティスト……)

彡(゚)(゚)(そんな、あの頃に戻って来た――)

33: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:26:07 ID:WTy

彡(゚)(゚)(それが嬉しくもあり、同時に悲しくもある……。複雑な心境だ)

彡(゚)(゚)(それは、今のワイはあの頃のワイであってそうでない、そんな曖昧な存在なのだから)

彡(゚)(゚)(ワイは一体何者なのか。どうしてこの時代へ飛ばされたのか)

彡(゚)(゚)(一層のこと、これから確実に起こるであろう、未来の大災害を予言してやろうか)

彡(゚)(゚)(――しかし、このタイムリープがいつまで続くのか分からない以上、そんなことをしても無駄であるし、ワイ一人にできることなど限られている)

彡(゚)(゚)(ワイはそうやって自分の可能性を、未来を、時間を潰してきた……)

彡(゚)(゚)(遠く、田んぼで大合唱する蛙の声がワイの自室に届く)

彡(゚)(゚)(このまま、いつかの人生を上書きしていく日々が延々と続くのだろうか)

彡(゚)(゚)(別の見方をすれば、人生をやり直すことができる――しかし、どのタイミングで終わるか分からない)

彡(゚)(゚)(そんな不安が常について回る)

彡(゚)(゚)(熱帯夜だからか、それともそんなモヤモヤを抱えているからか……。その夜はなかなか寝付けなかった)


34: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:28:19 ID:WTy

彡(゚)(゚)(そうして、ワイはいつかの夏を繰り返した――)

彡(゚)(゚)(夏休みが近づき、浮かれ立つ生徒たち)

彡(゚)(゚)(そんな生徒を傍目に、ワイは一人未来を憂う)

彡(゚)(゚)(受験を控えた人間が感じるような不安とも違う。漠然とした日々が延々と続くことへの不安である)

彡(゚)(゚)(まるで主人公に『ようこそ、ここは〇〇という村だよ』と言うためだけに配置された村人Aのような、そんな意味があってないような存在、日々……)

彡(゚)(゚)(何かを変えられるわけでもなく、ダイジェストな毎日を続けている)

彡(゚)(゚)(そして期末試験が終わり、いよいよ夏休みが目前となってきた)

彡(゚)(゚)(中学生としては最後の夏休み――いや、中学3年生二回目の夏休み)

彡(゚)(゚)(……このタイムリープがそこまで続くのか知らないが)

彡(゚)(゚)(いや、終わらせる……。とにかく、この現象を終わらせる糸口を掴まなくては……)


翔平「――おい、やきう」

36: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:30:13 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……?」

翔平「おいおい、最近のお前なんか変だぞ?」

彡(゚)(゚)「どうしたんや?」

翔平「どうしたもこうしたもあるか。なあ?」

中田「そうだよ(便乗)」

彡(゚)(゚)(休み時間……。気付けば友人の翔平と中田がワイの近くに立っていた)

翔平「……それでお前、今日の七夕祭りはどうすんだ?」

彡(゚)(゚)「七夕祭り……」

彡(゚)(゚)(そういえば、この日は7月7日。市と周辺商店街などが共催する七夕祭りの当日だった。出店が立ち並び、公園では花火を打ち上げる。地元民にとっては夏の風物詩となっているイベントである)

彡(゚)(゚)(まゆみちゃんも言ってたな……)

38: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:32:49 ID:WTy

中田「独り身のお前は、もちろん今年も一緒に行くだろ? 俺たちと」

彡(゚)(゚)「なんやと。ワイをお前らと一緒にすんな」

翔平「何だ? もしかしてお前抜け駆けしたのか!? 俺以外の奴と……!!」

中田「え……? もしかしてお前ら、そういう関係……」

彡(゚)(゚)「話がややこしくなるわ!!」

中田「お~い、俺も混ぜてくれよ~(マジキチスマイル)」

彡(゚)(゚)「やめてくださいよ! 殺すぞ! むかつくんじゃ!」

彡(゚)(゚)(そうだ……。確かこの日は翔平と中田と一緒に祭りに行くんだったな……)

彡(゚)(゚)「……悲しいかな。しゃーない、今年もお前らと一緒に行ってやるわ」

翔平「よし、じゃあ俺たちは部活終わってから行くから!」

彡(゚)(゚)「せやな。ほんじゃ駅前で待ち合わせや」

中田「そうだな。部活終わったら連絡するわ」

彡(゚)(゚)「おう」

41: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:35:22 ID:WTy

 【放課後、駅前】


彡(゚)(゚)(放課後、帰宅してもやることがなかったワイは、時間よりだいぶ早く待ち合わせ場所へやって来た)

彡(゚)(゚)(駅前商店街では、続々と出店の準備が始まっている)

彡(゚)(゚)(まだ祭りは始まっていないが、時間帯が時間帯だけに人通りが多い)

彡(゚)(゚)(……適当にどっかで時間潰すか)

彡(゚)(゚)(そうして、ハンバーガーショップへ向かって歩みを進める)

彡(゚)(゚)「……?」

彡(゚)(゚)(その時、群衆の中に見知った姿を発見した)

彡(゚)(゚)「まゆみ……ちゃん……?」

まゆみ「やきう君……?」

彡(゚)(゚)(見紛うはずもない……。そこにいたのは、浴衣を纏ったまゆみであった)

まゆみ「やきう君も、やっぱり来てたんだね……」

彡(゚)(゚)「お、おう……」

彡(゚)(゚)(朝顔の模様が浮かんだ、涼しげな浴衣を纏ったまゆみ。どこか地味に感じるような色合い、模様の浴衣でも、彼女が纏うと儚げな美しさを演出する)

彡(゚)(゚)(いつもは見られないまゆみの浴衣姿……。そんな非日常を垣間見て、どこか背徳感にも似た妖しい高揚感を覚える)

43: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:37:54 ID:WTy

彡(゚)(゚)「あ、まゆみちゃんも待ち合わせ?」

まゆみ「ええ……。でも、ちょっと早く来ちゃったみたい……。浮かれてるのかな、私も」

彡(゚)(゚)「ワイもソーナノ……」

彡(゚)(゚)(どうにかしてこの緊張が悟られないように、平静を装う)

彡(゚)(゚)「そういえば、今日は部活なかったん?」

まゆみ「先生が機転を利かせて、今日は特別に基礎練だけで終わらせてくれたの」

彡(゚)(゚)「はえー、ええ先生やな」

まゆみ「そうね、だから私もその気持ちに応えたってわけ」

彡(゚)(゚)「まゆみちゃん……。意外と策士というか、小悪魔やな……」

まゆみ「ノリがいいって言って欲しいわね」

彡(゚)(゚)「そっか……。それじゃ、まゆみちゃんも友達を待ってるって感じか?」

まゆみ「ええ。みんな浴衣を着て来るから、その分時間がかかるのよ――私は家が近いし、気持ちが早まって、こうして一番乗りで来ちゃったわけだけど」

彡(゚)(゚)(まゆみはそう言って、『どう? 浴衣似合う?』と続ける)

彡(゚)(゚)(ワイは動揺しながら『に、似合ってるよブフォ……』と言うと、まゆみは『お姉ちゃんのお下がりなんだけどね』といたずらに笑ってみせた)

45: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:40:23 ID:WTy

彡(゚)(゚)(その姿を見てワイは――ワイは、どうしてこんなにも緊張しているのだろう)

彡(゚)(゚)(それは……)

彡(゚)(゚)(過去の記憶が走馬灯のように巡り、そしてパズルのピースのようにハマった)

彡(゚)(゚)(そうか……。ワイは……)

彡(゚)(゚)「ま、まゆみちゃん……」

まゆみ「どうしたの?」

彡(゚)(゚)「ちょっと、いい?」

まゆみ「え……!? どうしたの……!?」

彡(゚)(゚)(ワイはまゆみの手を引いて、人通りの少ない路地裏へ行く)

彡(゚)(゚)(焦るワイの気持ちをまるで知らない野良猫は、面倒にあくびをして家々の隙間へ消えていった……)

まゆみ「あの……。やきう君……?」

彡(゚)(゚)(予想だにしない展開に、まゆみは動揺している……)

46: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:41:04 ID:qUl
おおっとこれは…

47: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:42:25 ID:WTy

まゆみ「あの……。手……」

彡(゚)(゚)「あ、ごめん……!」

彡(゚)(゚)(まゆみの手を掴んだままだったワイは、その一言で我に返り、パッと手を放す)

まゆみ「あの、どうしたの……? なんか怖いよ……?」

彡(゚)(゚)「いや……。その……」

彡(゚)(゚)(この衝動は何や。何でワイはこんなにも――)

彡(゚)(゚)(理由は、分かっていた)

彡(゚)(゚)「まゆみちゃん」

まゆみ「……?」



彡(゚)(゚)「ワイ、まゆみちゃんのことが好きや」

49: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:43:56 ID:R2C
まゆみが真弓なことに気付いてもうた
どうしてくれるんや

50: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:44:30 ID:WTy

まゆみ「……」

まゆみ「……え?」

まゆみ「それって……」

彡(゚)(゚)「その……。もちろん、恋愛的な意味で……」

まゆみ「……」

彡(゚)(゚)(やってしまった――その文字が、脳裏に深く刻まれる)

まゆみ「やきう君……」

彡(゚)(゚)(そしてワイは、その後に続く言葉も分かっている)

まゆみ「……」

彡(゚)(゚)(――ごめん)

まゆみ「……ごめん」

彡(゚)(゚)(――やきう君のことは、そういう風に見れない)

まゆみ「……やきう君のことは、そういう風に見れない」

彡(゚)(゚)(全部、分かっていた――それなのに)

51: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:46:14 ID:WTy

まゆみ「その……。でも、やきう君のことはいい友達だと思っているから……」

彡(゚)(゚)(――だから、私のわがままかもしれないけど、これからも友達でいて欲しい)

彡(゚)(゚)(彼女がそう言う前に、ワイは駆け出した――)

まゆみ「あ……!! やきう君……!?」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(どれくらい走っただろう……。気付くと、ワイは河川敷公園にかかる橋の上にいた)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(いつの間に日が暮れて、夜空には鮮やかな花が咲く)

彡(゚)(゚)(携帯が何度も震えている。着信の通知は十件を超えていた……)

彡(゚)(゚)(翔平に中田……。すまんな……)

彡(゚)(゚)(そう、ワイは全て知っていた。この日ワイはまゆみに告白し、見事に振られる)

彡(゚)(゚)(そして逃げ出して、後日翔平と中田にマジ説教されたんだよな……)

彡(゚)(゚)(分かっているのに……。どうしてワイは同じ過ちを繰り返したのだろう)

彡(゚)(゚)(過ちを繰り返す……。過ちは繰り返される……)


彡(゚)(゚)(そう、あれもそうだった――)

53: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:49:09 ID:WTy

彡(゚)(゚)(あれから、少しだけ時は流れ――7月15日)

彡(゚)(゚)「ハァ……。ハァ……」

彡(゚)(゚)(体育の時間……。女子はプールで授業をしている……)

彡(゚)(゚)(プールの授業は男女別で、交代制で行われる。前回は男子がプールを利用したので、今回は女子がその授業というわけだ)

彡(゚)(゚)(対する男子は、この暑い中外でソフトボール……)

彡(゚)(゚)(体育教師は体育館の教官室へ何かを取りに戻ったので、ワイはその隙に『トイレへ行く』といって女子が授業をするプールへ忍び込んだ)

彡(゚)(゚)(どうせソフトボールは毎回適当に試合をするだけや。ワイがその場を外しても、気にかける奴なんてほとんどいないだろう)

彡(゚)(゚)(そういう確信のもと、ワイは誰もいない女子更衣室へ忍び込んだ)

彡(゚)(゚)「ハァ……。ハァ……」

彡(゚)(゚)(どうしてこんなリスクを冒すのか)

彡(゚)(゚)「まゆみちゃんが悪いんやで……。ワイのせいじゃない……。君のせいや……」

彡(゚)(゚)(――過ちは、繰り返される)

彡(゚)(゚)(こうなることは分かっていた。分かっていたはずなのに……)

55: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:51:03 ID:WTy
彡(゚)(゚)「ま、まゆみちゃん……!! ウ゛ウ゛ッ!!」ドドドドドドドドピュウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!

57: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:52:37 ID:WTy

彡(゚)(゚)(分かっていたことなのに――そんな想いとは裏腹に、ワイの手の中にあるのはまゆみの生パンツ)

彡(゚)(゚)「……死にたい」

彡(゚)(゚)(まゆみのパンツを汚す、ワイの濁った白……)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(そう……。まゆみに振られたワイは女子更衣室に忍び込み、そして振られた腹いせに、まゆみの生パンツに射精する凶行に及んだのだ)

彡(゚)(゚)(……こうなることは知っていた)

彡(゚)(゚)(知っていたんや……。それなのに……)

彡(゚)(゚)(あの夏の日……。ワイの人生の崩壊、それが始まった日……)



まゆみ「やきう君……? 何で……?」ガチャッ

58: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:54:26 ID:WTy

彡(゚)(゚)「当ててやろう――お前の次のセリフは、『きゃああっ!!!! 変態よぉっ!!!!』と言う!!」

まゆみ「きゃああっ!!!! 変態よぉっ!!!!」

まゆみ「――ハッ!?」

彡(゚)(゚)(繰り返される悪夢……。悪夢は繰り返される……)

彡(゚)(゚)(人は、失敗に学べない)

彡(゚)(゚)(……更衣室にまゆみの悲鳴が響く)

彡(゚)(゚)(それと同時に、ワイの目の前に閃光が走り――)

彡(゚)(゚)(眩い光とともに、ワイの意識も途切れていった……)

60: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:56:42 ID:WTy

彡(゚)(゚)(どれくらいの時間が流れただろうか)

彡(゚)(゚)(そんな意識が暗闇の中に芽生える)

彡(゚)(゚)(それと同時に、『ワイは死んだはず』という意識もやって来る)

彡(゚)(゚)(目を開ける――開けることができた)

彡(゚)(゚)(これが死後の世界だろうか……。一面青一色の世界。乱反射という現象であったか、揺らめく光がその世界を照らしている)

彡(゚)(゚)(音が遠い……。何かモゴモゴとした音が聞こえるが、それはぼうっとしていてハッキリしない)

彡(゚)(゚)「……?」

彡(゚)(゚)(……浮遊感を覚える)

彡(゚)(゚)(まるで、水中にいるかのような――)

彡(゚)(゚)(そうか……。ここは、水中……?)

彡(゚)(゚)(でも、どうして……)

彡(゚)(゚)(――その時であった)

62: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:57:22 ID:qUl
あっ…(察し)

63: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:57:50 ID:WTy

彡(゚)(゚)(水面が揺らぐ……。上から何かが降って来る)

彡(゚)(゚)(降って来た衝撃によって発生した波紋や大量の泡。それと共に現れたのは――)

???「大丈夫か、やきう……!!」ザパァッ

彡(゚)(゚)(ワイは何者かに水面へ担ぎ上げられた……。ワイは溺れていたのだろうか)

???「おい、大丈夫か!?」

彡(゚)(゚)(ワイに声をかける男……。確かこいつは……)

彡(゚)(゚)「もしかして……翔平か?」ゴホッ、ゴホッ

翔平「お前、溺れたショックで友人の名前まで忘れたのか?」

彡(゚)(゚)「こ、ここは……?」

翔平「どうやら本当にやられたらしいな……」

翔平「今はプールの授業中だ。それでお前は溺れていた――これで理解できたか?」

彡(゚)(゚)「あ、ああ……。すまんな……」

翔平「一回上がったらどうだ? 本当に大丈夫か?」

彡(゚)(゚)「ああ……。大丈夫や、サンガツ……」

64: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:58:17 ID:IbI
ここがターニングポイントなんやなって

66: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:59:06 ID:WTy

彡(゚)(゚)(一体、どういうことであろうか)

彡(゚)(゚)(謎の少女に刺されて死んだはずのワイは、次に目を開けるとプールの中で溺れていたのだ)

彡(゚)(゚)(これは……。夢……?)

彡(゚)(゚)(プールサイドに上がると、信じ難い光景が広がっていた)

彡(゚)(゚)(懐かしい、翔平という友人……。中学時代の友人である)

彡(゚)(゚)(中学時代そのままの彼が、ワイの目の前に現れたのだ)

彡(゚)(゚)(それだけではない……。プールにいる人間、その全員をワイは知っているし、この景色でさえも知っている……。いや、覚えている)

彡(゚)(゚)(これは、ワイが通っていた中学校のプールや……!!)

彡(゚)(゚)(……ということは!!)

???「おいやきう、どこへ行くんだ!? 大丈夫か!?」

彡(゚)(゚)「あ、新井先生……?」

彡(゚)(゚)「と、トイレに行ってきます!!」

新井「お、おう……。前みたいに漏らすなよ?」

67: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)01:59:40 ID:R2C
漏らした前科持ちなのホンマ草

70: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:00:12 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……!!」

彡(゚)(゚)(トイレに行き、鏡に映った自分の姿を確認する)

彡(゚)(゚)「な、なん……やと……!?」

彡(゚)(゚)(これは夢である――そうとしか思えない状況)

彡(゚)(゚)(鏡に映ったワイの姿は、中学生のワイであった)

彡(゚)(゚)「そんな、馬鹿な……」

彡(゚)(゚)(きっと夢だ――そう思って、ありがちであるが頬をつねる)

彡(゚)(゚)「痛っ!? なにすんねん!!」ドグシャア

彡(゚)(゚)(自分を殴る――痛い)

彡(゚)(゚)「夢じゃ……ない!?」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(どういう原理であるか、どうやらワイは中学時代にタイムスリップ――いや、タイムリープしたらしい)

彡(゚)(゚)(およそ漫画や映画でしか目にしたことのない状況)

彡(゚)(゚)(そんな状況にワイは陥っている)

彡(゚)(゚)(夢であって欲しい……。しかし、痛みが知らせたのは残酷な現実である)

彡(゚)(゚)(どう、して……?)

71: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:01:52 ID:WTy

彡(゚)(゚)(疑問が押し寄せ、それに支配される)

彡(゚)(゚)(――この世界は残酷だ)

彡(゚)(゚)(これは、膨大な時間を無駄にしてきた自堕落なワイへの制裁なのだろうか)

彡(゚)(゚)(未だ微かに感じる頬の痛みが、ワイに何かを告げていた……)

彡(゚)(゚)「……」



彡(゚)(゚)「――って、これじゃあ前と同じやんけ!?」

彡(゚)(゚)「これは、一体……」

73: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:03:28 ID:WTy

彡(゚)(゚)(酷い既視感……。デジャヴ……)

彡(゚)(゚)(その後ワイは翔平の介抱のもと保健室へやって来る)

彡(゚)(゚)(外傷はないみたいだけど、心配なら検査の予約を――養護教諭はそのように提言する)

彡(゚)(゚)(そう……、あの時と同じ展開……)

彡(゚)(゚)(やがてワイは放課後、駐輪場で一人思考する)

彡(゚)(゚)(何もかも同じ、同じ展開……)

彡(゚)(゚)(まるで手のひらの上で転がされているよう)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(どういうことや……)

彡(゚)(゚)(確かに覚えている――7月15日、ワイはあの凶行に及んだ。史実通りに)

彡(゚)(゚)(しかし、まゆみが登場して眩い光に包まれ……。そしてまたあのプールで溺れている展開からリスタートされたのだ)

彡(゚)(゚)(時間が、巻き戻った……!?)

76: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:05:36 ID:WTy

彡(゚)(゚)(ともするとこれは、タイムリープならぬ『タイムループ』なのかもしれない)

彡(゚)(゚)(タイムループ――一定の時間軸が延々と繰り返される現象。某ライトノベル作品のとある話のように、夏が繰り返されている)

彡(゚)(゚)(もしこれが、そのタイムループ現象だとしたら……。ワイは何かを解決しない限り、一生このスパイラルの中で、回し車の中で地獄のラットレースを続けていくしかないということや)

彡(゚)(゚)(まだ救いがあるとすれば、『ループ現象の中にいる』という自覚があること。それすらなくて、無意識に繰り返しているとすれば、それこそ無限地獄である)

彡(゚)(゚)(とにかく、この無意味なループから抜け出さなければ……)

まゆみ「やきう君、どうしたの……?」

彡(゚)(゚)(いつかと同じように、まゆみに声をかけられる)

彡(゚)(゚)(綺麗に澄んだ瞳が、今はどこか淀んで見えた……)

78: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:07:38 ID:WTy

彡(゚)(゚)(一つ、判明したことがある)

彡(゚)(゚)(ワイがあの凶行に及び、そして時が巻き戻された)

彡(゚)(゚)(――ということは、ワイがまゆみの生パンツにぶっかけなければ、あの現象は起きないはずである)

彡(゚)(゚)(単純明快。つまり、『ワイの過去を修正しろ』ということだ)

彡(゚)(゚)(一連の現象が起きた原因、引き金となった原因があるとすれば、そこしかない)

彡(゚)(゚)(神様がいるならば、『過去を修正しろ』というメッセージを込めてこの試練を与えたのかもしれない)

彡(゚)(゚)(ならば、対策は簡単だ。まゆみの生パンツにぶっかけなければいい)

彡(゚)(゚)(そう、普段通りに7月15日を過ごせばいい)

彡(゚)(゚)(ただ、それまでの日々を今までと違ったように過ごすのも危険だ)

79: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:09:37 ID:WTy

彡(゚)(゚)(それは何故か――そう、例えばシミュレーションゲームで想像してみて欲しい)

彡(゚)(゚)(そういったゲームには『共通イベント』というものが存在する)

彡(゚)(゚)(どのルートにも共通するイベントだ。それは変えようのない不変の定理である)

彡(゚)(゚)(それを無理に変えようとするとどうなるか――ありがちな設定でいえば、神の干渉、世界の修復作用が発生し、また最初の地点に戻されるのだ)

彡(゚)(゚)(つまり、下手に大袈裟な行動を取ると、それが命取りとなる)

彡(゚)(゚)(だから、7月15日までは今までと同じ行動を取る。そして当日はぶっかけない)

彡(゚)(゚)(……これでワイはもとの時代に戻れる)

彡(゚)(゚)「神様、悪いな――チェックメイトや」ニヤリッ




彡(゚)(゚)(……などと、この時は浮かれていた)


80: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:09:43 ID:qUl
アトラクタフィールドの収束によってパンツに射精してしまう…

82: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:11:00 ID:qUl
考えられるのは
やきう以外の誰かが射精して
それの責任がやきうになるとか

83: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:11:59 ID:WTy

彡(゚)(゚)「どうして……。どうしてや……!!」

彡(゚)(゚)(確かにワイは同じ行動を取ったし、当日は何もせず過ごした)

彡(゚)(゚)(待ち合わせ場所に早く着いて、まゆみと遭遇して、そして告白して振られる。それから河川敷公園の橋まで走って行って、その後一人で帰る……)

彡(゚)(゚)(やがて15日を迎え、ワイは更衣室に行くことはせず、ちゃんと授業を受ける)

彡(゚)(゚)「完璧や……。完璧だったはずや……!!」

彡(゚)(゚)「それなのに――」

彡(゚)(゚)(目の前の光景に、ワイは驚愕するしかなかった)



新井「翔平……。お前、自分がやったことを分かっているのか?」



翔平「す゛、す゛み゛ま゛せ゛ん゛……!!」

警察官「それじゃ、署まで連行します……」



彡(゚)(゚)(翔平が、現行犯で逮捕された)


84: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:12:45 ID:qUl
大草原

85: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:14:00 ID:WTy

彡(゚)(゚)(罪状はこうだ――まゆみの生パンツにぶっかけ罪)

彡(゚)(゚)(何が起こったのかワイには理解ができない……)

彡(゚)(゚)(信じられないと思うが……。体育の時間、一人授業を抜け出した翔平はプールに忍び込み、女子更衣室にあったまゆみの生パンツを盗んだ)

彡(゚)(゚)(そしてぶっかけた後、それを持ってうろついているところを体育教師新井に見つかって取り押さえられた)

彡(゚)(゚)(そして警察まで呼ばれ……。今に至る……)

彡(゚)(゚)(そう、ワイが何もしなかった代わりに、何故か翔平が凶行に及んだのだ……!!)

彡(゚)(゚)「そんな……」

彡(゚)(゚)(ハバナ――そう呟いたところで、目の前が真っ白になる)

彡(゚)(゚)「またか……」

彡(゚)(゚)(ワイは半ば悟りの境地で、眩い光に包まれていった――)

86: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:14:09 ID:qUl
翔平「す゛、す゛み゛ま゛せ゛ん゛……!!」

警察官「それじゃ、署まで連行します……」



彡(゚)(゚)(翔平が、現行犯で逮捕された)

ここのスピード感

88: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:15:59 ID:WTy

彡(゚)(゚)(どれくらいの時間が流れただろうか)

彡(゚)(゚)(そんな意識が暗闇の中に芽生える)

彡(゚)(゚)(それと同時に、『ワイは死んだはず』という意識もやって来る)

彡(゚)(゚)(目を開ける――開けることができた)

彡(゚)(゚)(これが死後の世界だろうか……。一面青一色の世界。乱反射という現象であったか、揺らめく光がその世界を照らしている)

彡(゚)(゚)(音が遠い……。何かモゴモゴとした音が聞こえるが、それはぼうっとしていてハッキリしない)

彡(゚)(゚)「……?」

彡(゚)(゚)(……浮遊感を覚える)

彡(゚)(゚)(まるで、水中にいるかのような――)

彡(゚)(゚)(そうか……。ここは、水中……?)

彡(゚)(゚)(でも、どうして……)

彡(゚)(゚)(――その時であった)

彡(゚)(゚)(水面が揺らぐ……。上から何かが降って来る)

彡(゚)(゚)(降って来た衝撃によって発生した波紋や大量の泡。それと共に現れたのは――)

???「大丈夫か、やきう……!!」ザパァッ

彡(゚)(゚)(ワイは何者かに水面へ担ぎ上げられた……。ワイは溺れていたのだろうか)

???「おい、大丈夫か!?」

89: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:17:08 ID:WTy

彡(゚)(゚)(ワイに声をかける男……。確かこいつは……)

彡(゚)(゚)「もしかして……翔平か?」ゴホッ、ゴホッ

翔平「お前、溺れたショックで友人の名前まで忘れたのか?」

彡(゚)(゚)「こ、ここは……?」

翔平「どうやら本当にやられたらしいな……」

翔平「今はプールの授業中だ。それでお前は溺れていた――これで理解できたか?」

彡(゚)(゚)「あ、ああ……。すまんな……」

翔平「一回上がったらどうだ? 本当に大丈夫か?」

彡(゚)(゚)「ああ……。大丈夫や、サンガツ……」

彡(゚)(゚)(一体、どういうことであろうか)

彡(゚)(゚)(謎の少女に刺されて死んだはずのワイは、次に目を開けるとプールの中で溺れていたのだ)

彡(゚)(゚)(これは……。夢……?)

彡(゚)(゚)(プールサイドに上がると、信じ難い光景が広がっていた)

彡(゚)(゚)(懐かしい、翔平という友人……。中学時代の友人である)

彡(゚)(゚)(中学時代そのままの彼が、ワイの目の前に現れたのだ)

彡(゚)(゚)(それだけではない……。プールにいる人間、その全員をワイは知っているし、この景色でさえも知っている……。いや、覚えている)

彡(゚)(゚)(これは、ワイが通っていた中学校のプールや……!!)

彡(゚)(゚)(……ということは!!)

90: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:18:14 ID:WTy

???「おいやきう、どこへ行くんだ!? 大丈夫か!?」

彡(゚)(゚)「あ、新井先生……?」

彡(゚)(゚)「と、トイレに行ってきます!!」

新井「お、おう……。前みたいに漏らすなよ?」

彡(゚)(゚)「……!!」

彡(゚)(゚)(トイレに行き、鏡に映った自分の姿を確認する)

彡(゚)(゚)「な、なん……やと……!?」

彡(゚)(゚)(これは夢である――そうとしか思えない状況)

彡(゚)(゚)(鏡に映ったワイの姿は、中学生のワイであった)

彡(゚)(゚)「そんな、馬鹿な……」

彡(゚)(゚)(きっと夢だ――そう思って、ありがちであるが頬をつねる)

彡(゚)(゚)「痛っ!? なにすんねん!!」ドグシャア

彡(゚)(゚)(自分を殴る――痛い)

彡(゚)(゚)「夢じゃ……ない!?」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(どういう原理であるか、どうやらワイは中学時代にタイムスリップ――いや、タイムリープしたらしい)

彡(゚)(゚)(およそ漫画や映画でしか目にしたことのない状況)

彡(゚)(゚)(そんな状況にワイは陥っている)

彡(゚)(゚)(夢であって欲しい……。しかし、痛みが知らせたのは残酷な現実である)

彡(゚)(゚)(どう、して……?)

92: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:19:33 ID:WTy

彡(゚)(゚)(疑問が押し寄せ、それに支配される)

彡(゚)(゚)(――この世界は残酷だ)

彡(゚)(゚)(これは、膨大な時間を無駄にしてきた自堕落なワイへの制裁なのだろうか)

彡(゚)(゚)(未だ微かに感じる頬の痛みが、ワイに何かを告げていた……)




彡(゚)(゚)「――はい、三度目の正直かな?」

彡(゚)(゚)(もしくは、『仏の顔も三度』かな……)

彡(゚)(゚)「どうしてや……」

彡(゚)(゚)(その後、同じように保健室へ連れて行かれ、やがて駐輪場で一人思考を巡らせるワイ)

彡(゚)(゚)「どこで間違った……?」

彡(゚)(゚)(完璧だったはず――当日までは同じように過ごし、そして問題点は修正する)

彡(゚)(゚)(そう、完璧だった……)

彡(゚)(゚)(なのに、ワイがぶっかけなかった代わりに、何故か翔平がぶっかけた)

彡(゚)(゚)「……」

94: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:21:22 ID:WTy

彡(゚)(゚)「そういえば――」

彡(゚)(゚)(アイツ、確かまゆみと小学校が同じだったはず……。いわゆる幼馴染や)

彡(゚)(゚)(どっかでこんな噂も聞いた――翔平は小学時代にまゆみに告白し振られていると)

彡(゚)(゚)(なんとも後付け臭い話だが、そんな噂があったことを思い出した)

彡(゚)(゚)(その噂が本当ならば、ワイがぶっかけなかった世界線では、まゆみへの想いを諦めきれなかった翔平が代わりにぶっかけるというルートになっているのかもしれない)

彡(゚)(゚)(ならば、対策は一つ――当日、翔平をプールに行かせない)

彡(゚)(゚)(もしくは、説得して止めることや)

彡(゚)(゚)(ワイがぶっかけないのはもちろん、翔平にもぶっかけさせない)

彡(゚)(゚)(この世界線では、それを達成してみせる……! 三度目の正直や……!)

彡(゚)(゚)(ぶっかけノーノー記録を実現してみせるで!!)




彡(゚)(゚)(その時は、そのように意気込んでいた)


96: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:23:04 ID:qUl
前の世界線で時を超えて関節兜合わせしたのに
次は直接やな

97: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:24:01 ID:WTy

彡(゚)(゚)「はぁ……。あ ほ く さ 」

彡(゚)(゚)(確かに、ワイはできること全てをやった)

彡(゚)(゚)(トイレに行くと授業を抜け出した翔平。彼の後を密かにつけた)

彡(゚)(゚)(すると、翔平はプールへ忍び込もうとする)

彡(゚)(゚)(ワイはすかさず呼び止めて、彼を説得し改心させた)

彡(゚)(゚)(これで、このループから抜け出せる――勝利の確信が舞い降りる)

彡(゚)(゚)(しかし、舞い降りたのは死神だった)



女性体育教師「お前……!! 大人しくしろ……!!」

女性体育教師「……中田ァ!!」



中田「す゛、す゛み゛ま゛せ゛ん゛……!!」

彡(゚)(゚)「……ッ」



彡(゚)(゚)「 お 前 か よ ォ オ オ オ オ !!!! 」



彡(゚)(゚)(そして、目の前が真っしry)

99: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:25:18 ID:qUl
中田「俺も仲間に入れてくれよ~」
これが伏線とは

100: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:26:10 ID:WTy

彡(゚)(゚)(どれくらいの時間が流れただろうか)



彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「もうこのくだりええわ」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「……いい加減にしろよ!!」グシャア!

彡(゚)(゚)「ワイがぶっかけなければ翔平がぶっかける、だから翔平を止める」

彡(゚)(゚)「すると今度は中田がまゆみの生パンツにぶっかける……!!」

彡(゚)(゚)「どういうことやねん!!」

彡(゚)(゚)(あぁ、そういえばこんな噂もあった気がする――中田もまゆみと小学校が同じで、そして小学時代にまゆみに告白したが振られたと)

彡(゚)(゚)(だから、ワイがぶっかけなくて翔平もぶっかけなかった世界線では、中田が劣情を催し生パンツにぶっかけるのかもしれない)

彡(゚)(゚)「分かったわ……。そっちがその気なら、ワイだってとことんやってやるわ……!!」


101: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:28:26 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……素直に、射精です(白目)」




彡(゚)(゚)(ワイは全てをやりきった――そのはずだった)

彡(゚)(゚)(まず、トイレに行くと抜け出そうとした翔平を呼び止めて、そして中田も呼んで連れションへ誘った)

彡(゚)(゚)(そして、その後二人を連れて体育館の二階へ。プールで授業を受ける女子を眺めながら、青春を語り合った)

彡(゚)(゚)(つまり、この時間二人の自由を拘束したことで、ぶっかけを防いだのだ)

彡(゚)(゚)(これでクリアしたはず――そう思った)

教師数人「――三人に勝てるわけないだろォ!!」



教師数人「どうしてこんなことをしたんですか――新井先生!!」



新井「 す゛、す゛み゛ま゛せ゛ん゛ !! 」

彡(゚)(゚)「……」



彡(゚)(゚)「今度はお前かッッッッッッ!!!!!!」



彡(゚)(゚)(そして、目の前はry)

102: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:28:29 ID:qUl
次は新井先生かな

104: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:30:25 ID:qUl
これにはナイフ女も呆れ顔

105: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:30:35 ID:gFB

106: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:31:11 ID:WTy

 【校舎屋上】


彡(゚)(゚)「なんでや……。どうしてや……!!」

彡(゚)(゚)(何度正しい行動を取っても、必ず誰かがまゆみの生パンぶっかけ祭りを開催する)

彡(゚)(゚)(そしてワイはまた同じ夏を繰り返す……)

彡(゚)(゚)(どうしてや……。正しいと思っていてもゲームオーバーということは、どこかで選択肢を間違っていたということ……)

彡(゚)(゚)「一体、どこで……」

彡(゚)(゚)「そうや、分かった――ワイが死ねばいいんや」

彡(゚)(゚)「ワイが死ねば、きっとこの悪夢から覚める」

彡(゚)(゚)「そうすれば、ワイはもとの世界に戻れる」

彡(゚)(゚)「この屋上から飛び降りて、そして目を覚ませば、きっとワイは一人暮らしアパートのベッドの上か、もしくは実家の布団の上や」

彡(゚)(゚)「せや、だから……。ほな、また……」



???「――それはどうかしら?」

109: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:33:09 ID:WTy

彡(゚)(゚)(屋上から飛び降りようとした、その瞬間)

彡(゚)(゚)「だ、誰や……!?」

彡(゚)(゚)(凛とした声がワイの背中を刺す。その痛みに耐えきれず、ワイは思わず振り返った……)

???「……」

彡(゚)(゚)「あ、あんたは……!?」

彡(゚)(゚)(波のように押し寄せる頭痛……。割れるように痛い……)

彡(゚)(゚)「ッグ……!! ガハッ……!!」

彡(゚)(゚)(こいつ――どこかで!!)

彡(゚)(゚)「あんたは……!!」

彡(゚)(゚)「あんたの顔を、多分ワイは知っている……!!」

???「そう……(適当)」

彡(゚)(゚)(振り返った視線の先……。この中学の制服を身に纏った、長い黒髪の少女)

彡(゚)(゚)(艶やかな黒髪、風が運ぶ匂い……。それがワイの脳を刺激する……)

彡(゚)(゚)「あんたは――」

彡(゚)(゚)(もう一歩のところで、記憶が合致しない)

???「……」

110: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:34:43 ID:qUl
まゆみと一緒にいた2人のどっちかしか無いかな

111: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:35:12 ID:WTy

彡(゚)(゚)(そんなワイを見て呆れたのか、謎の少女は冷たい表情で肩を竦めた)

???「あなたが覚えていても、そうでなくても、私はどうでもいいけれど……」

???「一つだけ、忠告しておくわ」

彡(゚)(゚)「……!?」

???「あなたは、この幻想から逃れることはできない」

彡(゚)(゚)「……?」

彡(゚)(゚)「そんな……!! あんたが誰か知らんが、ワイはできる限りのことをしてきたはず!!」

彡(゚)(゚)「それでも駄目だと言うなら――それはこの世界がおかしいってことや!!」

彡(゚)(゚)「そうや、何もかもがおかしい!! だいたいここはどこや!? 夢か!?」

???「……」

彡(゚)(゚)「夢なら早く覚めてくれよ!! あんたならそれができるんちゃうか!?」

???「……」

???「あなた、自分は正しい行いをしたと勘違いしているようね」

彡(゚)(゚)「……!?」

113: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:37:15 ID:WTy

???「できる限りのことはやった――そう言ったかしら?」

???「でも、実際あなたはこうして夏を繰り返している」

彡(゚)(゚)「そ、それは……」

???「これは幻想であり、しかしあなたの現実でもあるのよ」

彡(゚)(゚)「ワイの、現実……」

???「――あなたは、これまで都合の悪い現実から目を背け、そして逃げてきた」

彡(゚)(゚)「な、なんやと……」

???「そして今現在であっても、あなたは『人事は尽くした。だからあとは天命を待つだけ』という姿勢を貫いた」

???「もしくは、『自分が死ねば解放される』と思い込んでいる」

???「無駄よ。あなたがここで飛び降りたとして、その先にあるのは本当の死か、あるいはリスタートよ」

彡(゚)(゚)「そんな……」

???「――私はあなたに問いかけようと思う」

彡(゚)(゚)「……?」

???「果たして、本当にあなたは人事を尽くしたの?」

彡(゚)(゚)「……ッ!?」

114: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:38:53 ID:WTy

???「そして、天命を待つことが全てなのかしら?」

???「このまま、待つだけでいいの? 来るかも分からない転機を」

彡(゚)(゚)「……ッ」

???「――常識に縛られてはいけないわ」

彡(゚)(゚)「常識……」

???「果たして、常識って何? 普通とは何?」

???「人に迷惑をかけないこと? 波風立てないこと?」

???「……違う」

???「常識なんてものは、誰かが作り出した幻想よ」

彡(゚)(゚)「幻想……」

???「あなたはその、常識という幻想にとらわれている」

???「その幻想の中にいる限り、あなたは幻想を繰り返す」

???「常識を打ち破ったとき、あなたの悪夢は覚める」

彡(゚)(゚)「……!!」

???「――常識を、世界を壊すのよ」

115: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:41:06 ID:WTy

彡(゚)(゚)「世界を、壊す……」

???「……そして、過去を清算しなさい」

彡(゚)(゚)「過去を……」

彡(゚)(゚)「一体、どういうことなんや……!?」

???「……」



???「ググレカス」スゥーッ



彡(゚)(゚)「あ、おい待てゐ!!」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「くそ、さっぱり分からん。何言ってんだあいつは」

彡(゚)(゚)「悔しい――空でも見上げたろ!!」

彡(゚)(゚)(謎の言葉を残し、少女は彼方へと消え去った……)

116: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:42:58 ID:WTy

彡(゚)(゚)(大事なものは、目に見えない――自分で考えろってことか)

彡(゚)(゚)(人生というゲームに攻略サイトはない。それは分かっている)

彡(゚)(゚)(だけど人間は『最短』という言葉にとらわれている)

彡(゚)(゚)(しかし、一瞬でレベルMAXになる主人公などいない)

彡(゚)(゚)(いたとしても、そんなものはつまらない……と思う)

彡(゚)(゚)(結局は何かの積み重ね、その連続)

彡(゚)(゚)「そうか……」

彡(゚)(゚)「ワイは、その『繰り返し』を疎かにしていたんやな」

彡(゚)(゚)(……何かを悟ったような、そんな心情が芽生える)

彡(゚)(゚)(核心への道は遠い……。けれど、ワイは生きている)

彡(゚)(゚)(ならば、何度失敗してもいいから前へ進むしかない)

彡(゚)(゚)(そしてこれは『ワイの過去を修正する』ということではないのだ)

彡(゚)(゚)(これは、修正ではなく上書き。もしくはリメイク)

彡(゚)(゚)(つまり『新たな物語を作り出せ』ということ)

彡(゚)(゚)(そうすればきっと、あいつが言った常識という幻想から抜け出せるはずや)

彡(゚)(゚)「……よし」


117: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:45:40 ID:WTy

 【7月7日】


彡(゚)(゚)(そして、何度目かの7月7日を迎える)

彡(゚)(゚)(あれから色々考えて、そして策を講じてきた)

彡(゚)(゚)(例えば――)



Sub:祭りのことやけど
To:翔平
 おう、やっぱり今日まゆみちゃんに告るわ。
 だからお前らにも協力して欲しい。
 さっき言った通りワイはまゆみちゃんを連れ出すから、お前らは指定の時間に来てくれ。
 それで多分筒香とか藤浪が待ち合わせ場所に来ると思う。
 だからお前らはそいつらと行動して時間を稼いで欲しい。
 お願いします! 後で埋め合わせしますから!
 何かあったらお前らにメールするから、頼みます!



彡(゚)(゚)(送信完了っと)

彡(゚)(゚)(そう……。これはワイの作戦)

彡(゚)(゚)(どういった作戦かといえば――)

118: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:48:13 ID:WTy

まゆみ「……やきう君?」

彡(゚)(゚)「あ、まゆみちゃんも来てたんや」

彡(゚)(゚)(いつもの光景。同じイベント……)

彡(゚)(゚)「……そっか、じゃあまゆみちゃんも友達を待ってるって感じか?」

まゆみ「そうね――」

彡(゚)(゚)(だが、ここからワイの作戦は始まる)

彡(゚)(゚)「まゆみちゃん、ちょっと……!」

まゆみ「え!? やきう君!?」

彡(゚)(゚)(まゆみの手を引いて、ワイは歩き出す)

彡(゚)(゚)(行先は路地裏――ではない)

まゆみ「ちょっと、どこいくの!?」

119: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:49:27 ID:WTy

彡(゚)(゚)「まゆみちゃん……」

まゆみ「やきう君……。その、手……」

彡(゚)(゚)「あ、すまん……」スッ

まゆみ「その、大丈夫……? なんかやきう君、怖いよ……?」

彡(゚)(゚)「……すまんな」

まゆみ「どうしたの、やきう君……?」

彡(゚)(゚)「まゆみちゃん……」

まゆみ「……?」

彡(゚)(゚)「あのな、ワイと」

まゆみ「……え?」

彡(゚)(゚)「七夕祭り、ワイと一緒に周ってくれんか?」

120: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:50:36 ID:WTy

まゆみ「……ッ!?」

まゆみ「で、でも……。私、みんなと……」

彡(゚)(゚)「じゃ、じゃあ、みんなが来るまでの時間でいいから……!」

まゆみ「それならいいけど……。でも、まだお祭り始まってないよ?」

まゆみ「そうだ――それじゃあ、やきう君のグループと、私のグループで一緒に周らない?」

彡(゚)(゚)「……ワイは、まゆみちゃんと二人で周りたい」

まゆみ「……ッ!!」

まゆみ「え……。で、でも……」

彡(゚)(゚)「だから、みんなが来るまででいいから……」

まゆみ「……うん、それなら」

彡(゚)(゚)(――よし。第一フェーズは成功や)

彡(゚)(゚)(問題は、この次や……)

彡(゚)(゚)(作戦は第二フェーズへ移行する)

121: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:52:04 ID:WTy

 【そして、時間は流れ――】


まゆみ「あの、やきう君……」

彡(゚)(゚)「どうしたんや? トイレか?」

まゆみ「ち、違うわよ……! あの、もうみんな来てると思うから……」

彡(゚)(゚)(ここらへんで年貢の納め時か)

彡(゚)(゚)(シンデレラの魔法は12時で解ける)

彡(゚)(゚)(……だが、ワイは延長コースや)

彡(゚)(゚)「――まゆみちゃん」

まゆみ「……?」

彡(゚)(゚)「黙ってて悪かったけどな、多分今頃藤浪や筒香は、翔平や中田と一緒におるで」

まゆみ「……え!?」

まゆみ「ちょ、ちょっと……!! どういうことよ……!?」

彡(゚)(゚)「恐らく『ワイとまゆみちゃんがいないから、一緒に探そう』という展開になって、ほんで一緒に祭りを周ってるはずや」

まゆみ「ちょっと、もしかして私を騙してたの!?」

122: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:53:53 ID:WTy

彡(゚)(゚)「そうなってしまうわな、すまんやで」

まゆみ「……!!」

まゆみ「なんで、そんなこと……!!」

彡(゚)(゚)「――なあ」

まゆみ「……?」

彡(゚)(゚)「あいつら、一緒に行動させてやらん?」

まゆみ「……は?」

まゆみ「どういう意味?」

彡(゚)(゚)「なんとなく、あいつらって相性いいと思うねん」

まゆみ「……!!」

彡(゚)(゚)「さっき、『それなら私たちのグループとワイのグループで周ろう』って言ったのも、ただ適当に言ったわけではないんやろ? 実はそこらへんの事情も少なからずあったとか?」

まゆみ「……」

まゆみ「なんか、やきう君って変わったよね……」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「いや、そういう人だったんだ」

彡(゚)(゚)「せや。軽蔑したか?」

まゆみ「……」

彡(゚)(゚)「だから、ワイらはできるだけあいつらに見つからないように」

彡(゚)(゚)「これからちょっとばかり、逃避行せんか?」スッ

まゆみ「……」

まゆみ「……」スッ

彡(゚)(゚)(怒り、そして羞恥が入り混じったような、そんな複雑な感情を浮かべた顔)

彡(゚)(゚)(そんな顔でワイを見上げるまゆみは、ただ無言で手を差し出す)

彡(゚)(゚)(ワイはその手を取って、祭りの雑踏の中へ彼女を誘った――)

123: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:56:09 ID:WTy

 【約一時間後、河川敷公園の橋の上】


まゆみ「……まだ、ふらふらする気?」

彡(゚)(゚)(なんとか第二フェーズも成功した)

彡(゚)(゚)(あとは、最後の第三フェーズや)

彡(゚)(゚)「せやな、ちょっと一休みしようか」

まゆみ「もう、みんな呆れて帰ってるかもしれないわよ?」

まゆみ「……何故か、電話もメールも来てないけど」

まゆみ「相当怒ってるのかも……」

彡(゚)(゚)「いや、むしろその逆だと思うで?」

まゆみ「……どういうことよ」

彡(゚)(゚)「――そろそろ花火が上がるはずや。ここ、ベストポジションらしいで」

まゆみ「……」

まゆみ「ねえ、やきう君」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「私、今から変なこと言うけど気にしないでね」

124: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:57:50 ID:WTy

彡(゚)(゚)(いや、それは無理だと思うんですが)

まゆみ「私、時々やきう君が分からなくなる」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「いや、よくよく考えてみれば」

まゆみ「私たちって、お互いをあまり知らないよね」

彡(゚)(゚)「……確かに、普段はそんなに絡んでないしな」

まゆみ「でも、私……。あなたのこと、ずっと前から知っていたような気もする」

まゆみ「いや、『何度も』知り合っているような気がする」

彡(゚)(゚)「――ッ!?」

彡(゚)(゚)(どういうことや……!! まさかまゆみも……!?)

まゆみ「だから、そんなに普段は絡んでないのに、妙な親近感を覚えるのかも……」

まゆみ「……いや、やっぱり気のせいかな」

まゆみ「ごめん」

彡(゚)(゚)「なんでやねん……」

まゆみ「私、おかしいね……。私も、何かが変わったのかもしれない」

まゆみ「でも、時々あなたを見ると感じる」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「やきう君の視線は、今を見ているようで違う。その視線は、ここではないどこかへ向けられている」

125: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)02:59:46 ID:WTy

まゆみ「そんな遠い視線を、私はいつも遠くから見ている……」

まゆみ「まるで、打ち上げ花火を横から見ているような」

彡(゚)(゚)「いや、普通下から見るでしょ」

まゆみ「……ふふっ」

まゆみ「そうだね」

彡(゚)(゚)(まゆみが『そうだね』と言った瞬間、夜空に大輪の花が咲いた)

彡(゚)(゚)(パッと光って、咲いた――)

まゆみ「……ッ」

彡(゚)(゚)(花火の閃光がコントラストを生み、暗闇と光の境界線がまゆみの顔にかかる)

彡(゚)(゚)(その境界線、暗闇のエリア内にあるまゆみの唇が四回動く)

彡(゚)(゚)(どのような形で動いたか、暗闇のせいでハッキリと分からない)

彡(゚)(゚)(そして何と言ったか――人々の歓声と、花火の炸裂音でそれは聞こえない)

彡(゚)(゚)(ただ無言で、花火を見上げるワイとまゆみ)

彡(゚)(゚)(やがて静寂が訪れると、彼女は名残惜しそうな表情で力なく笑った)

126: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:01:54 ID:WTy

彡(゚)(゚)(そして――)

彡(゚)(゚)「まゆみちゃん」

まゆみ「……?」

彡(゚)(゚)「ワイ、まゆみちゃんのことが――」

まゆみ「やきう君」

彡(゚)(゚)「……え?」

まゆみ「私、やきう君のこと……」

彡(゚)(゚)「……ッ!!」

まゆみ「やきう君のこと、好きになれない」

彡(゚)(゚)「――ッ」

まゆみ「いや、嫌いって意味じゃないの」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「でも、あなたはどこか遠すぎる」

まゆみ「だから、きっとこの恋はうまくいかない」

まゆみ「……そう思う」

まゆみ「だけどもし――もし、その距離が近くなったら」

まゆみ「その時は、よろしくね」

127: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:03:19 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(何言ってんだ、コイツ……?)

彡(゚)(゚)(それは、一体どういう意味であったか――まゆみはそう告げて、ワイに背を向ける)

彡(゚)(゚)(そして、『友達からメール来たから』と言って歩き出した)

まゆみ「やきう君」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「でも、楽しかったよ――ありがと」

まゆみ「またね」

彡(゚)(゚)(最後の言葉を残し、まゆみは群衆の中へ消えていく――)

彡(゚)(゚)「……まゆみちゃん!!」

彡(゚)(゚)「ワイは、絶対に諦めないからな!!」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(その言葉は、きっと彼女には届いていない。雑踏に掻き消された)

彡(゚)(゚)(けれど、それでいい――これは、不条理な幻想への悪あがき)

128: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:05:00 ID:WTy

翔平「――おい、いたぞ!!」

中田「おい、やきう!!」

彡(゚)(゚)(やがて、まゆみから聞きつけたのか、翔平と中田がワイのもとへやって来る)

彡(゚)(゚)「よく見つけたな」

翔平「いや、それは……」

中田「そんなことはどうでもいいんだよ!」

中田「お前、結果はどうだった……?」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「いやぁ、今世紀最大ってくらい盛大に振られたわ!!」

翔平「……お前」

中田「そうか……」

彡(゚)(゚)「せっかく協力してくれたのに、すまんな」

129: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:06:24 ID:WTy

翔平「いや、俺たちのことはいいんだよ」

中田「ああ……。というか、むしろ俺たちの方こそごめんというか……」

彡(゚)(゚)「どういうことや?」

翔平「その……。お前の作戦とはいえ、俺たちは俺たちで祭りを楽しんでしまったからさ」

彡(゚)(゚)「なんで謝る必要があるんや。祭りは楽しむのが普通やろ?」

中田「いや、そういう意味じゃなくてだな……」

彡(゚)(゚)「分かってる――ありがとな、お前ら」

翔平「……」

中田「……」

彡(゚)(゚)「せや、帰りにどっか寄っていかへん!?」

翔平「行きたいのはやまやまだけど、もう時間も時間だし、先生も見回りしてるだろうし……」

彡(゚)(゚)「大丈夫やって! どうせ教師陣はお疲れで居酒屋行って打ち上げでもするやろうし、飯食うくらいなら余裕やろ!」

中田「そうだな! よし、盛大に振られたお前の為に、今夜は俺たちが盛大に奢ってやる!」

翔平「よし、そうすっか!」

彡(゚)(゚)「お、サンガツやでー! 逆に振られて良かったわー!」

130: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:08:00 ID:WTy

彡(゚)(゚)(……)

彡(゚)(゚)(結局、どんなに物語を上書きしても、リメイクしても、ワイが振られる運命は変わらない)

彡(゚)(゚)(そう。変わらないということは、それが正解なのだ)

彡(゚)(゚)(これはあくまでも布石)

彡(゚)(゚)(この作戦の意図は、ワイの告白を成功させることではない)

彡(゚)(゚)(……牛丼屋。二人の想いを噛み締めて、そしてワイは最後の晩餐を味わう)


131: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:09:57 ID:WTy

 【7月15日。最後の日】


彡(゚)(゚)(これで本当に、できる限りのことはやった)

彡(゚)(゚)(まず、花火大会のことについては――)

彡(゚)(゚)(あの作戦の真意は、『藤浪・筒香と翔平・中田グループをできるだけ長く一緒にいさせる』ということだ)

彡(゚)(゚)(それは何故か……)

藤浪「翔平くん、その……。最後の試合、見に行くから……」

翔平「ほ、本当に……!?」

藤浪「うん。だからその……、頑張ってね? お、応援してるから!」

翔平「あ、ありがと! 頑張るわ!」

彡(゚)(゚)「……」

筒香「しょうがないなー。私も応援に行ってあげる」

中田「し、しょうがないって何だよ!!」

筒香「応援してあげるって言ってんの!!」

筒香「だからその……。ま、負けたら許さないかんね//」

中田「お、おう……! ホームラン打ってやんよ!」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「死ね」ボソッ

彡(゚)(゚)(ワイが振られたのにも関わらず、そんなワイの周辺でイチャイチャされるのはホンマに腹が立つ)

彡(゚)(゚)(しかし、あの日の作戦はこれで成功した)

132: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:12:39 ID:WTy

彡(゚)(゚)(そう、藤浪・筒香と翔平・中田をできるだけ長く一緒にいさせた理由とは――)

彡(゚)(゚)(彼らをくっつけさせるためだ)

彡(゚)(゚)(それは何故か……)

彡(゚)(゚)(それは、翔平と中田の意識をまゆみから逸らすためだ)

彡(゚)(゚)(これまでの経験から、ワイが今日まゆパンにぶっかけなかった場合、翔平と中田のどちらかがそれにぶっかけることは分かっている)

彡(゚)(゚)(なので、両者の意識をまゆみから逸らし藤浪・筒香へ向けさせることで、それを未然に防ぐという形だ)

彡(゚)(゚)(だから、あの祭りの日にワイはまゆみを連れ出して、できるだけ長く逃げた)

彡(゚)(゚)(全ては藤浪と翔平、筒香と中田をくっつけるため。少しでも親密な関係にするために)

彡(゚)(゚)(藤浪と筒香が翔平と中田に気があること、その情報をワイは知っていた。これは、これまで何度も同じ日々を続けて、そうして蓄積されたデータから生まれた作戦……)

彡(゚)(゚)(そんな女子と一緒に行動して、そしてアプローチされたら、例えまゆみという存在があっても少しは気が揺らぐだろう)

彡(゚)(゚)(カップルになれば御の字。そうじゃなくても、まゆみから意識を逸らせればよかった)

彡(゚)(゚)(なので、これは僥倖といえる……)

彡(゚)(゚)(――さて、ここまではうまくいったが、まだ問題はある)

133: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:14:55 ID:WTy

彡(゚)(゚)(翔平と中田の意識をまゆみから遠ざけることはできた)

彡(゚)(゚)(しかし、例え両者を封じることができても、また新たな人間が登場しまゆパンにぶっかける)

彡(゚)(゚)(過去に、新井先生がそうしたように……)

彡(゚)(゚)(そう。ワイが誰を封じても同じ結果になってしまうのだ)

彡(゚)(゚)(――なので『ワイはまゆみを諦めていない』、『ワイはまだまゆみが好きで、まゆみを狙っている』という情報を言いふらした。拡散させるように仕向けた)

彡(゚)(゚)(こうすることで『ライバルがいるなら、下手なことはできないな』というプレッシャーをまだ見ぬぶっかけ野郎へ与えることができる)

彡(゚)(゚)「ふう……」

彡(゚)(゚)(だが、それも気休めにしかならないだろう)

彡(゚)(゚)(どんな対策を打っても、必ず誰かがプールへ忍び込む。それは宿命であり、不変の定理である)

134: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:17:12 ID:WTy

彡(゚)(゚)(――できる限りのことはやった)



 ……常識を、世界を壊すのよ。



彡(゚)(゚)(そうやったな)

彡(゚)(゚)(そうや……。だけどワイは、天命を待たない)

彡(゚)(゚)(なぜなら、ワイが天命を作るから――)



135: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:19:12 ID:WTy

 【体育の時間】


新井「おーし、それじゃ始めっぞー!」

彡(゚)(゚)「先生トイレ!」

新井「先生はトイレじゃないぞ(大松)」

新井「……また漏らすなよ?」

彡(゚)(゚)「あーい! 出し尽くしてきますわー!」

彡(゚)(゚)「……」


 【プール前】


彡(゚)(゚)「よし、誰もいない……」

彡(゚)(゚)(だけど授業は始まったばかり――これからぶっかけ野郎が来るに違いない)

彡(゚)(゚)(例えそいつを待ち伏せして止めることができても、今度は違う誰かが忍び込んで凶行に及んでいた――それが今までのパターン)

彡(゚)(゚)(つまり、どうあがいてもワイ一人では防ぎようがないのだ)

彡(゚)(゚)(だったらどうするか――ワイから攻める!!)

136: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:20:46 ID:WTy

彡(゚)(゚)「急げっ!! 奴らが到達する前に!!」

彡(゚)(゚)(ワイは全速力でとある場所へ向かった……)

彡(゚)(゚)「そう……! 待つだけじゃ何も変わらない……!」

彡(゚)(゚)「だから……! 自分で変えてみせろってことなんやろ……!?」

彡(゚)(゚)「どうせろくでもないワイの人生や!」

彡(゚)(゚)「就職浪人、脛かじり……! どうしようもない底辺な人生……!」

彡(゚)(゚)「常識常識っていうけどよ……! こちとらもうそんなレールからとっくに逸脱してるんじゃ……!」

彡(゚)(゚)「神様だかなんだか知らんけど……! おめーはワイを分かってない……!」

彡(゚)(゚)「ワイはとっくに常識外れで――」

彡(゚)(゚)「そして、失うものがない人間ってのは最強なんやッ!!」

137: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:22:28 ID:WTy

 【別棟 理科実験室】


彡(゚)(゚)(――そして、ワイのリメイクストーリーはここで完結する)

彡(゚)(゚)(別棟、理科実験室……。その教室の前にある非常ボタン)

彡(゚)(゚)(火災などが発生した時のために備え付けてあるものだ)

彡(゚)(゚)(たいていはこのように、消火器の収納スペースに搭載されている)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(この時間、どのクラスも実験室を使わないことは織り込み済みだ)

彡(゚)(゚)「つまり――これでチェックメイト」

彡(゚)(゚)(あまりチンタラしている暇はない)

彡(゚)(゚)(覚悟を決め、息を吐いて……)

彡(゚)(゚)「時を駆けて――時を!!」




彡(゚)(゚)「 よ ろ し く お 願 い し ま ぁ す !! 」パリン!!

138: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:24:13 ID:WTy

 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


彡(゚)(゚)(刹那、けたたましいサイレンの音)

彡(゚)(゚)(耳をつんざくような大音響が校舎中に響き渡り、それは別棟を超えて本校舎へ届く)

彡(゚)(゚)「さてと、このまま捕まってもええけど……。プールが気になるしな……」

彡(゚)(゚)(念には念を。ワイは急いでその場を後にしてプールへ向かう)


 【プール 女子更衣室】


彡(゚)(゚)「どうやら、他の生徒や先生は避難訓練通りに校庭に整列してるらしいな」

彡(゚)(゚)「まゆみちゃんの生パンツは……」

彡(゚)(゚)「よし、あるな」

彡(゚)(゚)「これで、これでやっと終わる……」

彡(゚)(゚)「――いや、念には念を」

彡(゚)(゚)(これでタイムループが終了するなら、あの閃光が発生するとかそういうイベントが起きるはず――しかし、未だそれは起きない)

彡(゚)(゚)(ということは、まだ終了条件は満たしていないということ)

彡(゚)(゚)(焦るな……。ゲームだって終了地点にゴールしないと終わらないやろ?)

彡(゚)(゚)(そんな風に言い聞かせて、ワイは更衣室を後にする。絶対に怪しまれるのは明白であるが、ワイは急いで整列しているクラスの集団へ向かった――)

140: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:26:25 ID:WTy

 【そして――7月16日】


J( ‘-`)し 「はい、はい……。この度は誠に申し訳ありませんでした……!」

J( ‘-`)し 「うちの馬鹿息子が……。はい、はい、本人にもキツく言っておきますので……!」

J( ‘-`)し 「はい、はい……。それでは、失礼します……」ガチャッ

J( ‘-`)し 「――あんたって奴は、本当にやってくれたわね」

彡(゚)(゚)「……」

J( ‘-`)し 「受験もあるっていうのに……! なんてことをしてくれたんだい!」

J( ‘-`)し 「どうしてあんたは、そうやって迷惑ばっかり――」

彡(゚)(゚)「はぁ……」

J( ‘-`)し 「ため息をつきたいのはこっちの方だよ!」

J( ‘-`)し 「いいかい……。今夜もう一回家族会議するから……!」

J( ‘-`)し 「動物裁判だ……!(激憤)」

彡(゚)(゚)「狂いそう……!(静かなる怒り)」

J( ‘-`)し 「かーちゃんはパート行ってくるから、くれぐれも大人しくしてるんだよ!」

J( ‘-`)し 「自宅謹慎三日間! しっかりとお勤めするように!」バァン!

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「はぁ……。お母さんといっしょも終わり、がんこちゃんも終わってしもうた……」

彡(゚)(゚)「暇や……。ちょっと散歩でも行くか……」

141: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:28:17 ID:WTy

 【とある公園】


彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「どうしてや……」

彡(゚)(゚)(少し、頭を整理しよう――)

彡(゚)(゚)(まず、ワイは確かに終了条件を達成したはず……)

彡(゚)(゚)(終了条件――あのプールの時間、その時間だけまゆみのパンツを死守すること)

彡(゚)(゚)(そうすれば、ワイのミッションはクリアとなる)

彡(゚)(゚)(あの時間だけ守ればいい……)

彡(゚)(゚)(だから、ワイは実験室の非常ボタンを押した)

彡(゚)(゚)(なぜ非常ボタンを押したか――)

彡(゚)(゚)(まず前提として、ワイがプールをいくら監視しようと、異変が起きる)

彡(゚)(゚)(いくら一人を止めようと、新たな一人が出現し、そしてまゆパンは犯される)

彡(゚)(゚)(だったら、そいつらをプールから遠ざけてしまった方が早い。攻撃は最大の防御ってやつや)

彡(゚)(゚)(その方法が、非常ボタンを押すことやった)

142: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:29:52 ID:WTy

彡(゚)(゚)(非常ボタンを押せば、誰かが確認に行き、そして放送が入る)

彡(゚)(゚)(念のため、避難訓練通りに生徒や教職員は校庭に整列させられる)

彡(゚)(゚)(昨日もそうやった――放送が入り、生徒・教職員は校庭に集合させられた)

彡(゚)(゚)(つまりワイ以外の全校生徒、並びに教職員は嫌でも校庭に誘導されて、そして動きが制限されるってことや)

彡(゚)(゚)(その結果、プールに行くことができない)

彡(゚)(゚)(そして、まゆみの生パンツは守られる……)

彡(゚)(゚)(――ワイは、その条件を達成したはずやった)

彡(゚)(゚)(事実あの騒動の後、まゆみは何も言わなかったし、異変はなかった)

彡(゚)(゚)(クリアしたってことや)

彡(゚)(゚)(なのに……。タイムループが終わらない……!)

彡(゚)(゚)「いや……」

彡(゚)(゚)「タイムループに、異変が起きている……?」

143: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:31:48 ID:WTy

彡(゚)(゚)(もしあれが失敗ならば、ワイはまたリスタートを喰らうはず。また初めからやり直しになるはず)

彡(゚)(゚)(なのに、それが起きない……。それどころか、幻の7月16日が発生している……!!)

彡(゚)(゚)(まるで『ぼくのなつやすみ』のバグみたいな……)

彡(゚)(゚)「あれめっちゃ怖いんや……。勘弁してくれよな……」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(――そして、ワイは三日間の自宅謹慎処分を言い渡され、幻の7月16日を生きている)

彡(゚)(゚)(あの後、ワイは職員室から呼び出しを喰らい、担任や学年主任、生活指導の教師から尋問を受けた)

彡(゚)(゚)(あの時間ワイ以外に授業を退席した者がいなかったこと)

彡(゚)(゚)(そして、ワイが唯一授業を抜け出していたこと。その他目撃証言……)

彡(゚)(゚)(そういった証拠を照合し、ワイは容疑者になったようだ)

彡(゚)(゚)(なので、ワイは自白した)

彡(゚)(゚)(正直言って、まゆパンに何もなければそれでいいのだ)バカボン

彡(゚)(゚)(何もなければ、ワイはもとの時代に戻れる。だから簡単に自白した)

彡(゚)(゚)(そんなワイに謹慎処分が下され、そして反省文提出が命じられた)

彡(゚)(゚)(本来なら、別に反省文とか書く必要はない――だって、もとの時代に戻れるはずだから)

144: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:33:21 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「どうしてや……」ジョンボリ

彡(゚)(゚)(誰もいない、小さい公園……。ベンチに寝そべり、空を仰ぐ)

彡(゚)(゚)(アブラゼミ、ミンミンゼミの騒々しい鳴き声……。そんな鳴き声も、今はワイの虚無感を紛らわせてくれる)

彡(゚)(゚)「少し、寝るか……」

彡(゚)(゚)(木陰だし、熱中症にはならんやろ……)

彡(゚)(゚)(まあ、熱中症で死んでも、それはそれでいいか――)

彡(゚)(゚)(今度こそ、やることはやった。神様だろうが誰だろうが、文句を言われる筋合いはない)

彡(゚)(゚)「ふわぁ……。お休み……」

145: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:35:21 ID:WTy

 【数時間後】


彡()()「……」

 ……くん。

彡()()「……?」

 ……やきう君。

彡()(゚)「……?」

 ……やきう君!

彡(゚)(゚)「ファッ……!? ウーン(死亡)」

まゆみ「ちょっと、大丈夫……!?」

彡(゚)(゚)「あ、まゆみちゃんか……」

まゆみ「全然起きないから、もしかして熱中症か何かだと……」

彡(゚)(゚)「すまんな、この通り大丈夫や!」

まゆみ「見れば分かるわ……」ハァ

彡(゚)(゚)「それより、どうしてここに……?」

まゆみ「渡したいものがあって――最初、お家にお邪魔したんだけど」

146: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:36:40 ID:WTy

彡(゚)(゚)「あぁ、すまん……。よくここが分かったな」

彡(゚)(゚)「部活終わりか……? 今日、土曜日やもんな」

まゆみ「ええ、そうよ――結構探したのよ? この暑い中」

彡(゚)(゚)「すまん、許してクレメンス……。後でなんか奢るから……」

まゆみ「ふふっ、覚えとくね」

彡(゚)(゚)「それで、渡したいものって何や?」

まゆみ「――これ」ファサッ

彡(゚)(゚)「原稿用紙?」

まゆみ「ええ。先生から頼まれて」

彡(゚)(゚)「ああ、これで反省文を書けってことか」

まゆみ「そうね――昨日、渡しそびれたみたい」

彡(゚)(゚)「そういえばもらってなかったわ……。ありがとな」

まゆみ「ええ」

まゆみ「……」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「せ、先生も人使い粗いよなぁ!」

147: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:38:17 ID:WTy

まゆみ「……?」

彡(゚)(゚)「いくら委員長といえども、このクソ暑い中生徒に届けさせるなんて!」

まゆみ「まあ、そもそもあなたがあんな問題を起こさなければ良かった話なんだけど」

彡(゚)(゚)「あっ……(察)」

まゆみ「ふふっ……、冗談よ」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「……」

まゆみ「ねえ、やきう君」

彡(゚)(゚)「……なんや?」

まゆみ「何で、あんなことしたの?」

彡(゚)(゚)「そりゃ、ストレスや。受験やら何やらで、最近親と喧嘩しててなぁー」

彡(゚)(゚)「まあ、完全な八つ当たりや」

まゆみ「――嘘ばっかり」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「……」

まゆみ「ごめんね、やきう君」

彡(゚)(゚)「な、何でまゆみちゃんが謝るんじゃ!?」

まゆみ「それは……」

まゆみ「ごめん、何でもない……!」

まゆみ「……」

彡(゚)(゚)「……」

148: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:40:17 ID:WTy

彡(゚)(゚)(なんやこの空気……。気まずい……)

まゆみ「やきう君」

彡(゚)(゚)「今度はなんじゃ」


まゆみ「やきう君……。まだ私のこと、諦めてない?」


彡(゚)(゚)「……え」

彡()()「……」

彡(-)(-)「……」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「せやな」

彡(゚)(゚)「ワイ、まゆみちゃんのこと好っきゃねん」

まゆみ「……」




まゆみ「……私も、好きだよ」

149: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:42:01 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡()()「ファッ……!?」

彡(゚)(゚)「え、それマッ!?」

まゆみ「――だけど」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「私たちの距離、離れたままだね」

彡(゚)(゚)(こいつ、さては〇スペかな? また意味不明なことを――)

まゆみ「だから、ごめんなさい……」

まゆみ「今はまだ、あなたと一緒にはなれない――」サッ

彡(゚)(゚)「あ、ちょ、待てゐ!」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「でも、私――」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「いつか私から、必ず会いに行くから!!」

まゆみ「もし、その時まで諦めてなかったら」

まゆみ「私も、諦めないから――」ザッ

彡(゚)(゚)「あ……!! ちょっ……!!」

150: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:44:40 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……一体、どういうことやねん」

彡(゚)(゚)「まあ、ワイはまた振られた――ホモは二度刺す、みたいなね」

彡(゚)(゚)「なんちゅーオーバーキルや」

彡(゚)(゚)「あーあ。まあ、所詮女なんてこんなもんよ!」

彡(゚)(゚)「やめたやめた! もういいもんね!」

彡(゚)(゚)「こうなったら徹底的にグレてやるわ!」

彡(゚)(゚)「非常ベルどころやない! 校舎の窓ガラス全部割ってこの支配からの卒業を果たすんや!」

彡(゚)(゚)「……」




???「――これで、良かったの?」

151: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:46:33 ID:WTy

彡()()「ファッ!?」

彡(゚)(゚)「いきなり来ないで! 死ぬかと思ったぞ!?」

???「……」

彡(゚)(゚)「お前……。神様だかなんだか知らんが、今更何の用や?」

彡(゚)(゚)(自暴自棄になったワイの前に、あの謎の少女が現れる)

???「これで、いいの?」

彡(゚)(゚)「いいわけないやろ。二回振られるし……」

???「……」

彡(゚)(゚)「ま、でもええんや!」

???「……?」

彡(゚)(゚)「史実でも、ワイはまゆみちゃんに振られた」

彡(゚)(゚)「無闇やたらに、過去を変えるのもヤバいんちゃうか?」

彡(゚)(゚)「それにな、今は妙な達成感もあんねん」

???「……達成感?」

彡(゚)(゚)「せや。ループ現象っつーか、再スタート現象が起きないということは、ワイはあの課題をクリアしたってことやろ?」

彡(゚)(゚)「だから、達成感があんねん」

彡(゚)(゚)「こんなクズ人間でも、何かを成し遂げることはできるんやなって」

152: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:48:52 ID:WTy

???「……」

彡(゚)(゚)「だから、もうええんや」

彡(゚)(゚)「もう、これで満足や」

彡(゚)(゚)「……何でもとの時代に戻れないのか、その原因を探る課題がまだ残ってるけどな」

???「――ありがと」

彡(゚)(゚)「……え!?」

彡(゚)(゚)(神様からの意外な一言――その一言に、ワイは思わず顔を上げる)



???「あ゛り゛か゛と゛ね゛……!」



彡(゚)(゚)「……」



彡(゚)(゚)「……何で泣いとるんや、神様」

153: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:50:26 ID:WTy

???「これで、やっと解放される……!」

彡(゚)(゚)「か、解放……!?」

???「これで、悲しい命が誕生することはなくなる……!!」

彡(゚)(゚)「ど、どういうことや――ファッ!?」

彡(゚)(゚)(神様、もとい少女の嗚咽と共に、眩い光が発生する)

彡(゚)(゚)(それは少女の体を包み込み、そして次第に大きくなって……)

彡(゚)(゚)「い、一体どういうことや……」

???「ありがとう……!!」

彡(゚)(゚)「あんたは……」



???「ありがとう――お父さん!!」



彡(゚)(゚)「……ッ!?」

彡(゚)(゚)「ど、どういうことや!!」

彡(゚)(゚)「ま、待てゐッ!! 待てゐッ!!」

彡(゚)(゚)「君は……!! 君は……!!」



彡(゚)(゚)「 君 の 名 は っ !? 」



彡(゚)(゚)(そして、光は全てを包み込み)

彡(゚)(゚)(やがて、ワイの意識もホワイトアウトした――)


154: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:52:12 ID:WTy

 【とある夏の日、朝】


彡()()「……」

 ……ピピピピ。

彡(-)(-)「……」

 ……ピピピピ!

彡()(゚)「……?」

 ……ピピピピピピ!!

彡(゚)(゚)「じゃかましぃわっ!!」ドグシャッ!!

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「何だ、目覚まし時計のアラームか……」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「む。この部屋は……」

彡(゚)(゚)(見慣れた部屋――そう、ここは)

彡(゚)(゚)「ここは、ワイのアパート……」

彡(゚)(゚)「ボロアパート……。ワイが一人暮らししている、あのボロアパートの一室……!」

彡(゚)(゚)「――ということは!!」

彡(゚)(゚)(枕元に置かれたスマートフォンを確認する)



彡(゚)(゚)「2018年、7月16日……」

155: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:53:45 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「やった……」

彡(゚)(゚)「ワイは、戻って来れた……?」

彡(゚)(゚)「戻って来れた……!!」

彡(゚)(゚)「ファーwwwwww」

彡(゚)(゚)「やったで!! ワイはやった!! 戻って来れたんや!!」

彡(゚)(゚)「いや、待て――」

彡(゚)(゚)(念のためユニットバスへ向かい、鏡を確認する)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「そう、このどうしようもない無精ひげ。そして死んだ魚のような目」

彡(゚)(゚)「紛れもなく、現在のワイや……!!」

彡(゚)(゚)「やったあああああああああああああああああああああああああああ」

彡(゚)(゚)(遂に、遂に戻って来れた――ワイは歓喜のあまり外へ飛び出す)

彡(゚)(゚)「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

157: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:55:13 ID:WTy

隣人「うるせえぞ!! ぶっ殺すぞクルルァ!!」

彡(゚)(゚)「すみません」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「よし、落ち着こうか。まだ慌てるような時間帯じゃない」

変態郵便屋「……」ブロロロロ……

彡(゚)(゚)「ん? ワイのポストに手紙?」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(投函された郵便物を確認する)

彡(゚)(゚)「これは……」



彡(゚)(゚)「結婚式の、招待状……?」

158: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:56:34 ID:WTy

 【時は流れ――とある結婚式の二次会の会場】


彡(゚)(゚)「いやー、ワイからすれば遅すぎって話やねん!」

中田「お前、もう出来上がってんのか?」

彡(゚)(゚)「当たり前や。高いご祝儀払って出てやったんだから、出された料理と酒を味わう権利はワイにもあるっちゅーねん」

中田「はは、その乞食精神は変わってねぇーなー」

彡(゚)(゚)「うっせ! 新郎野郎!」

筒香「まぁまぁ、二人とも」

彡(゚)(゚)「筒香ちゃんはほんとできた嫁やでー。こいつにはもったいないわ!」

中田「何だとこら。それと今は筒香じゃねーよ、『中田嘉江』だから!」

彡(゚)(゚)「ちっ、幸せオーラ出しやがって」

嘉江「でも、こうしてみんなで集まるの久しぶりだねー」

中田「そうだなぁ。まぁ、残念ながら翔平は来れなかったけどな!」

嘉江「しょうがないじゃん。だって翔平君は今やメジャーリーグの名プレイヤーだよ?」

中田「そうだなぁ……。なんか現実感ねぇーわ」

159: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)03:58:34 ID:WTy

中田「それに、藤浪――」

嘉江「違うでしょ? 大谷晋子」

中田「ああ、そうだったな!」

嘉江「もう! 私たちも二人の結婚式に行ったでしょ!」

中田「すまん、つい昔の名前が――そうそう、晋子ちゃんも翔平も今はアメリカ暮らし!」

中田「会えないのは残念だが、ビデオレターくれたし、元気でやってるしなによりだ!」

嘉江「子供さんも大きくなってたね!」

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(ちょっと前まで、中学時代にタイムリープしていたワイ――そんなワイからすれば、この光景こそがニワカに信じられないが)

彡(゚)(゚)(そう。藤浪と翔平は結婚し、そして中田と筒香もこうして結ばれた)

彡(゚)(゚)(まさかあの時のカップルが、こうしてずっと続いてゴールインするとは……)

彡(゚)(゚)(まあ、お前らのキューピットはワイなんですけどね、初見さん)

彡(゚)(゚)「……」

中田「おい、やきう」

彡(゚)(゚)「……?」

中田「お前は、どうなんだ?」

160: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:00:45 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……ワイ、ちょっとトイレ行ってくるわ」

嘉江「あ、逃げる気だ」

中田「逃がさないぞ?」

彡(゚)(゚)「……」

中田「翔平も、それに俺もおかげさまでここまでこれた」

中田「だから、今度はお前の番だ」

中田「頑張れよ?」

彡(゚)(゚)「……おう」

嘉江「それから――」

???「ごめんなさい! 遅れました!」

中田「お、話をすれば――だな」

彡(゚)(゚)「……!!」

まゆみ「ごめんなさい……! 式にも参加できなくて……!」

嘉江「大丈夫! だって社運をかけた一大プレゼンがあったんでしょ?」

まゆみ「どうしても外せなくて……。本当にごめんなさい……」

まゆみ「それに、一旦帰って支度をしたから……。二次会にも遅れちゃって……」

嘉江「スーツのままでも良かったのよ?」

まゆみ「そういうわけにはいかないじゃない」

嘉江「ふふっ、冗談だよ――まゆみも今やバリバリのキャリアウーマンだもんね!」

嘉江「忙しい中、来てくれてありがとね!」

まゆみ「そんな――本当におめでとう! 幸せになってね!」

嘉江「ありがとっ」

中田「ありがとな、委員長!」

まゆみ「もう、その呼び方はやめて……!」

161: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:02:34 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(会場に、まゆみが現れた)

彡(゚)(゚)(あの幻想の中では会っていたけど、こうして大人になった彼女を見るのは初めてだ……)

彡(゚)(゚)(ドレスアップしたまゆみは、とても綺麗で気品があって……。あの頃一つに纏めていた髪は長く伸びて、とても華麗で艶やかだ)

彡(゚)(゚)(フィットしたドレスは彼女の抜群なプロポーションを一層際立たせ、煽情的な色香を漂わせる)

彡(゚)(゚)(場内が少しざわつく……)

彡(゚)(゚)(無理もない、彼女のような美人が現れたのだ)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「……ちょっと、一服してくるわ」

中田「あ、おい……!」

彡(゚)(゚)(別に、何かやらかしたわけでもない)

彡(゚)(゚)(だけど何故か気まずくなって、ワイは思わず席を外した――)

162: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:04:17 ID:WTy

 【会場の外】


彡(゚)(゚)「はぁー、タバコタバコ……」

彡(゚)(゚)「ふぅ~……」スパー

彡(゚)(゚)(時間というのは流れるように過ぎる)

彡(゚)(゚)(あの幻想の中にいたせいで、それを如実に感じる)

彡(゚)(゚)(気付けば皆ワイの前を歩いていて、ワイは一人あの幻想の中に取り残されている)

彡(゚)(゚)(そう感じると、ワイの本当の居場所はこの現実ではなくあの幻想の中だったのかもしれない)


  ……都合の悪い現実から目を背け、そして逃げてきた。


彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「……そうやな」スパー

彡(゚)(゚)「いつまでも、ネバーランドの中にはいられないってか」



まゆみ「――どうしたの?」

163: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:05:36 ID:WTy

彡(゚)(゚)「ファッ――熱っ!?」ジュッ

まゆみ「あわわっ!? ご、ごめんね!? 大丈夫!?」

彡(゚)(゚)「あー、ビックリしたわ……。大丈夫やで……」

まゆみ「そっか、良かった……」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「……」

まゆみ「久しぶりだね」

彡(゚)(゚)「せやな」

まゆみ「いつぶりだっけ?」

彡(゚)(゚)(ブリブリブリュリュリュリュリュブッチチブリブリ)

彡(゚)(゚)「……多分成人式以来か?」

まゆみ「そうだね」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「……」

まゆみ「やきう君、あの頃と変わらないね」

164: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:07:08 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……それ、悪口か?」

まゆみ「いやいや、そういう意味じゃなくて」

まゆみ「なんか、みんなこうやってどんどん変わっていっちゃうじゃない?」

まゆみ「でも、やきう君はあの頃のやきう君って感じがして……」

まゆみ「なんというか、安心した」

彡(゚)(゚)「安心?」

まゆみ「うん……」

まゆみ「私も、なんというかまだあの頃にいる気がするの」

まゆみ「未だに、夢を見たりする」

彡(゚)(゚)「……」

まゆみ「それって、悪いことなのかな?」

彡(゚)(゚)「いや、それは人間の自然現象というか、生理現象というか……」

彡(゚)(゚)「自分が見ようとして見てるものでもないし、しゃーないやろ」

まゆみ「……そっか」

彡(゚)(゚)「おう」

まゆみ「……」

まゆみ「……なんかさ、不思議だよね」

165: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:08:29 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「中学時代のカップルが、こうして二組もゴールインなんて」

まゆみ「もちろん、喜ばしいことだけど」

彡(゚)(゚)「まあ、せやなぁ……」

まゆみ「そういえば、あの二組のなれそめってなんだっけ?」

まゆみ「どうして付き合うようになったんだっけ?」

彡(゚)(゚)「それは……」

彡(゚)(゚)「あの、中3の時の夏祭りとか?」

まゆみ「あー、あの時か!」

まゆみ「確か、やきう君が私を散々連れまわした時ね!」

彡(゚)(゚)「ワイが、散々連れまわした……?」

まゆみ「連れまわしたじゃない! もしかして忘れちゃったの!?」

彡(゚)(゚)(……歴史が、上書きされている?)

彡(゚)(゚)(あの幻想の中でワイが上書きしたことが正史になっている?)

彡(゚)(゚)「……いや、もちろん覚えてるで」

まゆみ「良かった。あんなことしたのに忘れちゃったのかと思った」

166: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:10:14 ID:WTy

彡(゚)(゚)「あんなことって――悪かったよ」

まゆみ「ふふっ、冗談よ――楽しかったよ? あの時」

まゆみ「なんかさ、最近あの夜の夢を見たんだ」

彡(゚)(゚)「……!!」

まゆみ「――あのさ」

彡(゚)(゚)「……え?」

まゆみ「あれから、色々あったじゃん?」

彡(゚)(゚)「色々?」

まゆみ「うん。嘉江や晋子が付き合い出したり、それから……」

まゆみ「やきう君が、あの問題起こしたり……」

彡(゚)(゚)「ワイの黒歴史を掘り起こさないでクレメンス」

まゆみ「あ、ごめん……!」

彡(゚)(゚)「いや、冗談や……。もう時効や、かまへん」

まゆみ「それで、さ……」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「何で、あの事件を起こしたの?」

167: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:11:32 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……いつだったか、理由言わなかったっけ?」

まゆみ「……?」

彡(゚)(゚)「あー、だからあれは受験とかのストレスで……」

まゆみ「――今だから言えるけどさ」

まゆみ「あの事件って、もしかして私のせい?」

彡(゚)(゚)「ちゃうで」

まゆみ「いや、自意識過剰かもしれないけど――私に振られたことで鬱憤がたまってやってしまったのかなって」

彡(゚)(゚)「……それで『はい』って答えたらどうなるんや」

まゆみ「……え?」

まゆみ「さすがやきう君、いじわるね」

彡(゚)(゚)「まあな」

まゆみ「ふふっ……。そうね……」

まゆみ「責任を取って、付き合ってあげる」

彡(゚)(゚)「――確かにまゆみちゃんも変わってないわ。そういう策士なとこ」

まゆみ「かもね。ふふっ……」

まゆみ「……」

まゆみ「……ねえ?」

彡(゚)(゚)「……?」




まゆみ「――今も、諦めてない?」

168: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:12:57 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……ッ」




彡(-)(-)「……」





彡(゚)(゚)「――いや、さすがに折れたわ」

169: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:14:46 ID:WTy

まゆみ「……!」

まゆみ「……」

まゆみ「ふふっ。そっか……!」

彡(゚)(゚)(なぜワイはそんな風に答えたのか、自分でも分からなかった)

彡(゚)(゚)(ただ、ワイはあの頃に依存している気がして……)

彡(゚)(゚)(だからほんの強がりでも、自分は前を向いているということを表明したかったのかもしれない)

彡(゚)(゚)(あれほど、諦めたくなかったのに)

まゆみ「……そっか!」

彡(゚)(゚)(まゆみは、そう言って無邪気に笑う。どこか納得したようにも見えた)

彡(゚)(゚)(その姿を見て、ワイも自然と笑ってしまった)

まゆみ「……時間って、残酷だね」

彡(゚)(゚)「……?」

まゆみ「でもさ」

まゆみ「今は、やきう君を近くに感じる」

170: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:16:35 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……ッ!?」

まゆみ「――それじゃ」

彡(゚)(゚)「……え?」



まゆみ「今度は、私が諦めないから」



彡(゚)(゚)「え――それって」

まゆみ「……会いに行くって言ったでしょ?」

彡(゚)(゚)「え……。ちょ、ちょっと待てゐ!」

まゆみ「会場に戻るね!」

まゆみ「また、話そ?」スッ

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(颯爽とその場を後にしたまゆみ……)

彡(゚)(゚)(いつだってワイは彼女の背中を見ることしかできない)

彡(゚)(゚)(それでも……)

彡(゚)(゚)(いつかは本当の意味で、心から正面で)

彡(゚)(゚)(彼女を見ることができるだろうか――)

171: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:18:14 ID:WTy

 【それから――】


彡(゚)(゚)(ある夏の日、ワイは帰省した)

彡(゚)(゚)(そして――なんとか仕事が決まった)

彡(゚)(゚)(仕事自体は清掃業。誰かが落とした糞を食べ――片付ける)

彡(゚)(゚)(作業場は主に駅や公共施設など)

彡(゚)(゚)(お前らが漏らした糞を片付けているのはワイや。もしお前らが糞を漏らした時は、ワイの顔を思い出して二度とやめてクレメンス)

彡(゚)(゚)(――などと、自分語りはここらへんにしておいて)

彡(゚)(゚)(今回の帰省は、そんな報告も含めての帰省となった……)

172: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:19:37 ID:WTy

妹「――お兄ぃ、どこ行くの?」

彡(゚)(゚)「ああ、ちょっと散歩行ってくるわ」

彡(゚)(゚)(今では大学生のイモウット。散々ワイを蔑んでいたギャルの面影は、大学生になってだいぶマシになった)

彡(゚)(゚)(イモウットも都会に一人暮らしであるが、ワイと似たようなタイミングで帰省した。最近は就活だのなんだので相当荒れているようだ)

妹「お兄ぃ……」

彡(゚)(゚)「なんや? 殺すぞ」

妹「――これ」

彡(゚)(゚)「……なんや? 財布か?」

妹「お兄ぃ、未だに財布マジックテープのボロいやつじゃん」

彡(゚)(゚)「マジックテープの財布を馬鹿にするな。殺すぞ」

妹「だから、その……。プレゼント」

173: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:21:01 ID:WTy

彡(゚)(゚)「なんや急に」

妹「だって……。その、就職決まったんでしょ?」

妹「だから……。お、おめでとう……」

彡(゚)(゚)「……」

妹「い、今どきそんな財布使ってたら恥ずかしいから!」

妹「そんな財布使ってる人が兄貴って知られたら恥ずかしいし!」

妹「だから買ってあげただけだから!」

妹「じゃあねっ!」スッ

彡(゚)(゚)「……」




彡(゚)(゚)「妹、近親婚、海外――検索検索」

174: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:22:34 ID:WTy

 【とある神社の前】


彡(゚)(゚)「ここは……」

彡(゚)(゚)(色々と懐かしくなり、周辺を散歩していた)

彡(゚)(゚)(すると、最後に通りかかったのはとある神社)

彡(゚)(゚)(その境内へ続く石段の前へ来た)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「ここへ来たのも何かの縁――仕事も決まったし、報告でもするか」

彡(゚)(゚)(この神社には因縁もあるしな)

彡(゚)(゚)(そして、長い石段を上る……)

彡(゚)(゚)(響き渡る蝉しぐれ……。ヒグラシの声が、あの頃のワイを連れて来る)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(半分ほど上ったところであったか。真ん中を通る金属製の手すりによって上り方面と下り方面に分けられた石段――その下り方面、向かい側から誰かが下りて来る)

彡(゚)(゚)(夕時、境内へ近付くにつれヒグラシの声が徐々に大きくなる……。寂しげで儚い時間帯と妙に合っているような、そんな様相の女)

彡(゚)(゚)(長い黒髪は煽情的で、どこかの制服――あれは確かワイの出身校であったか、それの夏服を身に纏った涼しげな少女が石段を下りてくるではないか)

彡(゚)(゚)(素直に、射精です――いや、こんな時間帯に少女が一人参拝とは、一体何事であろうか)

彡(゚)(゚)(そんな想像をしていると、気付けばその少女は目の前にいて、すれ違おうとしていた……)

175: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:24:40 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

少女「……」

彡(゚)(゚)(そして今、すれ違う――)

少女「……ッ」

彡(゚)(゚)「……ッ!!」

彡(゚)(゚)(長い黒髪、風が運ぶ匂い――そう、この匂いは)

彡(゚)(゚)「……ワイは、あんたを知っている」

少女「……」

彡(゚)(゚)(すれ違って、振り向きもせず声をかける)

少女「……」

少女「……ええ。私もあなたを知っています」

彡(゚)(゚)「あんたは、これで良かったのか?」

少女「……」

少女「ええ……。これで良かったのです」

彡(゚)(゚)「それで、あんたは一体何者や」

少女「私は、あなた自身です」

彡(゚)(゚)「……」

少女「そして、あの人自身です」

彡(゚)(゚)「そうか……」

176: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:26:11 ID:WTy

彡(゚)(゚)「いつかまた、会えるか?」

少女「……」

少女「……ええ」

少女「いつでも、会えます」

少女「だって――私はあなたと、そしてあの人の中にいるのだから」

彡(゚)(゚)「……そうか」

彡(゚)(゚)「ほんでな」

彡(゚)(゚)「あんたの名前は――」

彡(゚)(゚)(尋ねて、そしてようやく振り返る……)

彡(゚)(゚)「……?」



彡(゚)(゚)(しかし、そこには誰もいなかった――)

178: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:27:45 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(――これは、あくまでもワイの推測)

彡(゚)(゚)(あの少女はワイ自身であり、そしてあの人自身であると言った)

彡(゚)(゚)(つまり、あの少女の正体は……)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(いや、あまり大っぴらに言いたくはないのだが……)

彡(゚)(゚)(恐らく、恐らくだ)




彡(゚)(゚)(あの少女は、ワイの精子とまゆみのパンツが融合して生まれた存在)




彡(゚)(゚)(ワイがまゆパンにぶっかけたことで生まれてしまった悲劇の存在)

彡(゚)(゚)(やから、自分のような悲劇が誕生しないようにと)

彡(゚)(゚)(そういう思いで、ワイをタイムリープさせた)

彡(゚)(゚)(そして歴史をリメイクさせた)

彡(゚)(゚)(つまり、あれは少女の復讐であり)

彡(゚)(゚)(加えて、親であるワイとまゆみへの恩返しだったのかもしれない)

179: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:28:07 ID:ome
なんてことだ…

181: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:30:32 ID:WTy

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)(そよ風が吹く――少し肌寒く、秋を感じさせるような)

彡(゚)(゚)(例え過去をやり直せたとしても、変えられない運命はある)

彡(゚)(゚)(だったら、過去ではなく未来を作るしかない)

彡(゚)(゚)(未来を作れば、過去も変わる。自分の中で肯定できる過去として……)

彡(゚)(゚)(だから、どんなに惨めだっていい。情けなくってもいい……)

彡(゚)(゚)(毎日の繰り返しで、ワイは未来を作っていこう――)

彡(゚)(゚)「……」

彡(゚)(゚)「……ありがとな」







射爆了

182: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:31:21 ID:ome

183: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:31:51 ID:WTy
>>182
サンガツ

184: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:32:26 ID:gFB
乙やで

185: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:32:57 ID:WTy
サンガツでした。

186: 名無しさん@おーぷん 2018/08/10(金)04:35:16 ID:EWt
おつやで